「中国」とはなにか。単純にみえて実は誰もが当惑する課題に、中国の歴史学者が正面から挑んだ。世界の中心を自任した歴代の中国王朝だが、実は支配領域の変化につれて深刻な課題を抱え込んできた姿を歴史、文化、政治の角度から著者は描き出している。
その上で、中国自身が巨大な「帝国」の記憶と、現実の「国家」とを混同する危うさに警鐘を鳴らす。大国願望をあらわにする習近平政権と向き合う上で、示唆に富む論考が短い文章にあふれる。東アジアの地図を手に本書を読めば、著者のメッセージが視覚から飛び込んでくるはずだ。(岩波現代文庫・1008円)