ただ、同苑を退所後に自宅での生活が定着する人は1割程度。多いのは、退所後、しばらく家で過ごし、再び施設に帰ってくる『往復利用』だ。同苑では3~6カ月の長期入所に対して、要介護が重い4、5の人で2週間超の帰宅、要介護1~3の人で1カ月超の帰宅を目指す。100床のベッドに対して、現在の利用者は約200人。みんなが特養並みに長期入所をすると、利用できる人が限られてしまう。「短期間でも家族と一緒の時間を過ごしてほしい」との意図もある。
ただ、松浦部長は「入所の時点で『もう一度、家で受け入れたい』と言う家族はいません」と明言する。重い認知症の人の介護は、家族にはトラウマになって残るからだ。しかし、本人が入所から2~3週間で落ち着き、表情が変わってくると、家族からは「もう一度、頑張ろうかな」という声が出るという。