□みずほ総合研究所常務執行役員 調査本部長・チーフエコノミスト 高田創氏
今回の『国債暴落』は12年前の2001年に住友謙一氏との共著である中央公論新書ラクレ『国債暴落』がベースとなっている。12年前の当時、警戒していた経済回復が見え始めたときこそ国債暴落の可能性が高まる、というタイミングに今や来たのではないかとの認識から、今回改めて筆をとることにした。
多くの人々は自らは国債と縁遠いと思っても、結局、誰もが預金を通じて国債を保有する。本当は身近なものなのだ。
今年13年はアベノミクスとされる環境のなか、「失われた20年」からの脱却が期待されるが、その出口に向けた道筋を実現できるか否かは国債市場をいかに安定させるかが鍵を握る。単に市場に任せて国債暴落になれば、出口を実現できなくなる。
13年の「異次元の金融緩和」の意味するものは、米国の大恐慌時の「ペギング(くぎ付け)」の発想に類似した「異次元の債券市場」にあるとの認識にあり、暴落を回避すべく日銀が国債を購入するのは歴史的にも不可避な対応と考えた。市場参加者としても国債市場の価格変動が抑えられ管理相場下に向かうという観点から、市場構造に「変質」が生じているとの認識をもつ必要がある。これは、日本にとどまらず、QE3という観点から国債購入を強めた米国にもあてはまり、昨今、良く指摘される「金融抑圧(financial repression)」とも関連する。