【日曜経済講座】(論説委員・井伊重之)
日本経済の転換点となった「第1次石油危機」から40年を迎えた。イスラエル軍とエジプト・シリア連合軍が衝突した1973年10月の第4次中東戦争を発端にアラブ諸国が石油価格を一斉に引き上げ、イスラエルを支援する国には供給削減をちらつかせた。石油を戦略物資として国際社会を牽制(けんせい)したのだ。
1バレル=3ドル程度で推移していた原油価格は一時、10ドル超にまで値上がりした。原油供給の削減懸念から電力使用制限令が初めて発動され、夜の繁華街でネオンが消え、テレビは深夜放送を取りやめた。パニック的な買いだめの動きが全国規模で広がり、トイレットペーパーや洗剤などが店頭から次々に消えた。
これと同時に「狂乱物価」の嵐が吹き荒れた。74年の消費者物価は前年比で23%増と記録的なインフレとなり、石油高と物価高で電気料金は50%も引き上げられた。60年代から年平均で9%の高度成長を遂げてきた日本経済だが、この年の経済成長率は戦後初めてマイナスに転落した。高度成長は石油危機で名実ともに終止符を打った。