【著者は語る】ビジュアルデザイナー・馬場雄二氏 (1/2ページ)

2013.11.2 05:00

 □「わくわく漢字の世界の大冒険」

 ■大嫌いからライフワークに

 講演会などでも、最初に「漢字は嫌いですか?」と聞くと、70%ほどの人が手を上げます。

 僕は、その後すぐに「終わるまでには、ほとんどの人を大好きにしてみせます」と大見え? を切ります。「本当?」と疑いのまなざしで見返す人もいますが、多くの人は身を乗り出します。「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)でも、この手をよく使いますが、結果はほぼ同じです。

 誰も、できれば漢字力をつけて、コミュニケーションの武器にし、日常生活に役立てたいと望んでいるのです。実は、僕も子供の頃、漢字が大嫌いでしたが、今ではライフワークの一つになっています。大嫌いになった原因は、授業が単純な反復練習の書き取りや、暗記ばかりの強要で、漢字本来の魅力を無視したクリエーティブな内容ではなかったからです。

 漢字特有の、英字や仮名のような単なる記号ではない、意味とイメージを備えた表意文字から受ける感動や魅力が、いつしか無意識のうちに「大嫌い」を「大好き」に変身させました。

 最近のテレビでも、インテリ芸人を名乗る人たちに、多分生涯二度と見ることがなく他には活用できないような難読漢字で競わせたり、お笑い芸人に重要とは思えない筆順を問い、間違えると笑いものにする番組がもてはやされています。これらはためになると錯覚しそうですが、こんなことで漢字力向上は期待できません。

 今回出版した『わくわく漢字の世界の大冒険』は、多くの漢字ゲーム開発や著作の経験を踏まえ、講演会やテレビ番組で好評だった漢字の持つ意味や形を発見するテーマを凝縮した、親子で楽しめる冒険物語です。

 大嫌いを大好きにする秘訣(ひけつ)は、まず自然に興味をもたせ、強制ではなく自発的に楽しむよう導くことです。

 本物の興味は継続しますから、漢字に限らずどの分野でもライフワークにまで発展するかもしれません。(1575円 日本図書センター)

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