なぜ40歳を提唱するのか。同部会の座長を務めた東京大学大学院経済学研究科の柳川範之教授は「社会の変化が早くなっているので、(40歳で)学び直しの機会が必要」と狙いを明かす。新卒で会社に入り、20年前後が経過し、現場から管理職に多くの社員が変わる40歳が大きな転換点になるわけだ。
これに対し、労働界などでは「40歳定年制は企業による安易なリストラを招く」(関係者)との警戒心は根強い。しかも、現在の日本では、40歳を超えてからの再就職は相当厳しい。柳川教授も「転職や再チャレンジを支援できる仕組みがきちんと整備されることが必要だ」と認めている。
報告書は労使が合意し、40歳定年制など早期定年制を導入した企業に、「定年後1~2年間の所得保障や社員の再教育支援制度の整備が必要」としている。正社員と非正規雇用の格差をなくし全員を一律有期雇用にすることも提案している。
実現性は不透明
これまでのところ、報告書に対して経済界や労働団体から表立った反応はない。しかし、こうした変革が企業の新たな負担となる場合、経済界からも強い反発が出ることも予想される。定年制引き上げに逆行する「40歳定年制」を、労働界が安易に認めるとは思えない。
もちろん「長期的な指針」という位置づけで、全ての面で早期実現を目指すわけではない。事務局をつとめる内閣府も「将来ビジョンとして各府省が適宜参考にするなどして活用してほしい」という姿勢で、実現可能性にも不透明感が漂う。