がんの治療薬をめぐってはこの10年前後で、日本人の研究者がシーズ(種)を見つけたにもかかわらず、日本でうまくいかず、海外で実用化した大腸がんに対する抗がん剤が複数ある。国内での新薬開発は後れを取り、日本の医薬品の輸入超過は平成23年、1兆3760億円に上り、日本の貿易赤字の半分以上を占めるほどに増大した。
そうした中、がんペプチドワクチンの研究・開発は日本がリードしており、実用化すれば世界初となる見通しだ。両社は今回の契約でワクチンの使用をすべての種類のがんに適用することにも合意。そこには「日本発で世界初の新薬承認」を是が非でも実現したいとの思いが込められている。
また両社はワクチンをがん以外でも、目の疾患である加齢黄斑変性や子宮内膜症といった一般疾患にも応用して使用することにも合意した。
オンコ社の角田卓也社長は「日本で研究し、開発した新薬を日本の患者に一日でも早く届けたい」と話している。
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がんペプチドワクチン療法 がん細胞やそれに栄養を供給する血管の細胞の表面に現れるタンパク質の断片(ペプチド)と同じものを人工的に作り、それを含むワクチンを注射すると、免疫の司令塔である樹状細胞が異変を感知。異物を攻撃する性質を持つキラーT細胞に伝達し、キラーT細胞はがん細胞の数に対抗できるほど増殖して攻撃を行い、がんを小さくする。患者自身の免疫力を使い、副作用がほとんどないのが特徴。外科手術、抗がん剤、放射線治療の標準療法に続く第4の治療法として期待されている。