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大学、3回目の新型コロナウイルスワクチン接種を不安視 会場確保に課題

 新型コロナウイルスの3回目のワクチン接種をめぐり、大学側が頭を悩ませている。若年層の接種率向上に寄与した大学での職域接種だが、3回目の接種時期は多くの学生がキャンパスに集まる来年4月の新年度開始と重なる可能性が高く、会場確保などが困難になるからだ。準備も大学にとっての繁忙期である受験シーズンに進める必要があり、大学側からは「課題は多い」との声も上がる。

 今年6月、東京都世田谷区の日本体育大世田谷キャンパスには、コロナワクチンの接種を希望する学生が集まっていた。対応のために駆り出されたのは多くの大学職員。担当者は「会場やスタッフの確保など、接種開始には多くの課題があった」と話す。

 文部科学省によると、全国364の大学が接種会場となり、これまでに学生や大学職員、地域住民ら約150万人が接種を終えた。一部は6月に1回目の接種を始めたが、多くの大学は授業や試験期間との兼ね合いから、比較的キャンパスが空いていて職員の業務も落ち着く7月以降の夏休み期間を活用し本格化した。

 国の方針では、職域接種にあたる大学での3回目の接種は来年3月以降に開始される予定だ。接種間隔は2回目から約8カ月以上が目安のため、単純に計算すれば、多くの大学の接種開始時期は来年4月以降になる可能性が高い。

 ただ、新年度からは関西学院大(兵庫県)が「授業を基本的に対面形式にする」と打ち出すなど、コロナ沈静化を踏まえて多くの大学で対面授業の全面再開に踏み切る見込みだ。キャンパス内が学生でにぎわうため、1、2回目以上に会場確保などのハードルが上がる。また、受験や新年度に向けた対応など、大学にとって最も忙しい時期に準備を進めなければならないという事情もある。

 10月中旬に2回目の学内接種を完了した東洋大(東京都)の担当者は「授業期間中の接種だと、スペースの確保や人流コントロールなどが課題となる。長期休暇中の方がやりやすい」と語る。3回目の必要性については十分認識しつつも、どのように対応するかは未定で「慎重に考えなければいけない」という状況だ。

 3回目の接種については、文科省は「実施が可能な大学があれば申し込んでもらう」とのスタンスで、これまで実施された大学全てで行われるかは不透明だ。末松信介文部科学相は今月12日の閣議後記者会見で「希望する大学が円滑にワクチン接種を実施できるように、適切な処理をして対応したい」としている。

 参加大学が減少すれば、1、2回目と違う会場での接種を余儀なくされる希望者が出てくることになる。「国がきちんと調整しなければ、国民に無用な混乱をもたらすのでは」(職域接種を行った大学の関係者)との懸念も出ている。(大泉晋之助、玉崎栄次)