クルマ三昧

日本カーオブザイヤー大賞候補「10ベストカー」出揃う 今年も激戦の顔ぶれ

木下隆之

 「日本カーオブザイヤー2021-2022」の第1次選考で「10ベストカー」が決定した。今年もバラエティ豊かな車種が選考され、12月の決戦投票に挑む。

 60人の審査員が選ぶ「大賞」

 ノミネート車両は、2020年の11月から2021年の10月までに日本で発表されたモデルが対象。日本車だけでなく輸入車も対象となる。

 最終的にはその中から、12月の決選投票で最多得票を得たモデルが「大賞」に選ばれるというシステムだ。仮に輸入車が大賞ではなかった場合に限り、輸入車の中の最多得票モデルが「インポートカーオブザイヤー」に輝く。さらには、デザイン製に優れたモデルに与えられる「デザインカーオブザイヤー」、技術的に優れたモデルが対象となる「テクノロジーオブザイヤー」、「パフォーマンスオブザイヤー」、そして軽自動車の優秀性が高く評価されれば「K CARオブザイヤー」が与えられるのである。

 日本カーオブザイヤーは、もっとも権威ある自動車の賞典といえるだろう。一般社団法人「日本カーオブザイヤー」が構成する実行委員会により運営され、実行委員会は自動車の主要メディアが会員となって組織を構築している。投票権を持つ選考委員は60人。自動車に対する造詣が求められる。日頃の活動が審査対象であり、メディアへの発信力が強いジャーナリストが毎年、厳選なる投票によって選ばれる。ちなみに、選考委員に報酬はない。

 三菱が久々のノミネート

 今年10台に選ばれたモデルはもちろん、どれもクルマとしての完成度が高く、今年も選考委員を悩ませることになるだろう。

 第1次選考は、スポーツの予選のように順位が与えられるものではなく、あくまで今年の10台に選出されたに過ぎない。よって、以下は名簿順になる。

 トヨタからは3台が10ベストカーに輝いた。「GR86/SUBARU BRZ」は、プラットフォームやパワーユニットが共通の“一卵性双生児”であり、生産はスバルである。という点で、両メーカーからの統一エントリーとなっている。

 トヨタはスポーツカーが10ベストカーに食い込んでいながら、一方で水素燃料自動車「MIRAI」も選ばれた。もう一台には「ランドクルーザー」が選ばれている。環境とレジャーという異なる性格のモデルが選出されており、幅の広さを見せつけた形だ。

 日産は「ノート」が10ベストカーに選ばれている。これも同様に、同じプラットフォームとパワーユニットを共用する「ノートオーラ」「ノート オーラNISMO」「ノートオーテッククロスオーバー」が兄弟車としてノミネート。多勢の強みを生かせるかが注目だ。

 ホンダは新世代ハイブリッドの「ヴェゼル」が選出された。メーカーがかける意気込みがヴェゼル1台に集中する点でも注目だろう。

 三菱の「アウトランダー」も評価が高い。このところ、メーカーとして発表するモデルが少なく、ノミネートされることも少なかったが、今年はもう1台のSUV「エクリプスクロスオーバー」の2台がノミネートされた。「アウトランダー」は三菱の期待を背負う。

 シボレー「コルベット」もベスト10入り

 輸入車で気を吐いているのがBMW「4シリーズ」である。豊富な車種構成であることが強みで、クーペ、カブリオレ、グランクーペ、M4クーペと、スタイリッシュな4ドアセダンから、超高性能スポーツモデルまでをラインナップする。選考は選考委員の考えや好みに左右される傾向がある。バラエティ豊かなモデル構成である点で言えば、取りこぼすことなく加点される可能性が高い。

 興味深いのはシボレー「コルベット」が10ベストカーに選ばれたことだろう。8代目コルベットは伝統的なFR駆動からミッドシップに変身したこともあり、話題性がある。右ハンドルを投入するなど、日本市場での高い評価も期待できる。

 超個性的なモデルは60人の選考委員から安定して加点されるのが困難な傾向にあるが、それでも得票を伸ばしたのは評価の証明であろう。

 メルセデス・ベンツ「Cクラス」とフォルクスワーゲン「ゴルフ・ヴァリアント」は、順当に第一次選考を突破した。Cクラスはセダンの、ゴルフはコンパクトハッチ型のベンチマークとして評価されている。もちろん完成度も高く、安定して得票される可能性が高い。

 というように今年も激戦が予想される日本カーオブザイヤーである。決選投開票は12月10日(金) 日本カーオブザイヤーの公式YouTubeチャンネルで配信される。

 不肖、木下隆之も選考委員であり、今から選考が悩ましい。

木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

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