5時から作家塾

進化するプロテイン 専門家に聞く効果の高い摂取法

吉田由紀子

 いま、プロテインの売り上げが伸びている。従来のドリンクや粉末タイプに加え、スナック菓子、麺類、レトルト食品など、多種多様なプロテイン商品が市場を賑わせている。

 プロテイン(タンパク質)は、これまでスポーツ選手や筋肉をつけたい人に向けて販売されてきた。しかし最近はユーザー層が変わり、ごく一般の消費者が増えている。そのため、タンパク質だけでなく他の栄養素を盛り込んだ「進化系のプロテイン」が人気を集めている。

 いったいどう進化しているのか?

 プロテインを開発・販売しているAuB(オーブ)株式会社に取材を行った。同社は、元サッカー日本代表の鈴木啓太さんが、2015年に設立したベンチャー企業。新しいタイプのプロテイン「AuB MAKE」を今年1月に発売し、売上を伸ばしている。

 「AuB MAKEは腸内環境を整えることを主目的に開発されたプロテインです。私たちの細胞をつくるのに欠かせないホエイ(乳清)とソイ(大豆)2種類のタンパク質を主原料に、酪酸菌など人体に有効な29種類の菌を配合しています。筋肉を効率よく増やすためには、まず腸内環境を整える必要があるのです」(広報担当・上田麻実さん、以下同)

 以前は男性ユーザーが大半だったが、この商品を売り出して以降、男女比が半々になったという。なぜプロテインが人気を集めているのか。

 「免疫力を高めてウイルスに負けない体に」

 「やはり新型コロナウイルスの影響が大きいと思います。巣ごもり状態になり、運動量が減った結果、体重が増加した方が多かったと思います。また、免疫力を高めてウイルスに負けない体にしたいと考える方もいたのではないでしょうか」

 同社は設立以来4年間にわたり、700名のアスリートに調査を行ってきた。その結果、プロテインを摂取しても筋肉が思うように増えない選手が少なくなかった。原因を調査すると、腸内環境に問題を抱えている選手が多いことが判明。そこで研究に取り組み、腸内環境を改善するプロテインを開発したのである。

 ちなみに人間の腸内には1000種類以上の細菌が生息しており、この細菌集団を腸内フローラと呼ぶ。腸内フローラは善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類に大別され、これらの菌の量やバランスによって腸内環境は変化する。

 「腸内細菌に関して最近注目が高まっているのが、プロバイオティクス、プレバイオティクスという考え方です。耳慣れない言葉ですが、これらは腸内の善玉菌を効果的に増やす摂取法のことです。プロバイオティクスは、ビフィズス菌や乳酸菌などのことで、ヨーグルトや発酵食品を指します。一方、プレバイオティクスは、食物繊維やオリゴ糖など菌のエサになるものを呼びます。この両方を摂取することで、腸内環境がより良好になるのです。そのため、AuB MAKEはタンパク質だけでなく、腸内細菌のエサとなる食物繊維やビタミン、カルシウム、マグネシウムも加えて、1日に必要な栄養素を摂取できる商品になっています」

 プロテインをどのように摂ればいいのか

 では、一般ユーザーはプロテインをどのように摂ればいいのか。管理栄養士の牧春菜さんに、プロテインの効果的な摂取法を聞いてみた。牧さんはアスリートの栄養指導をはじめ、腸内フローラの検査アドバイザーとしても活躍中だ。

 「なぜアスリートがプロテインを摂取するかと言いますと、トレーニングで筋肉細胞が傷つけられてしまうからです。それを補充するためにタンパク質を摂取します」(牧さん、以下同)

 一般的にプロテインは「ホエイ」「カゼイン」「ソイ」の3種類に大別される。

 「ホエイ(乳清)は牛乳由来のタンパク質で、母乳に近い栄養素を含んでいます。分岐鎖アミノ酸(BCAA)を多く含み、短時間で吸収されるため、筋肉の回復を早める効果があります。カゼインは、牛乳から脂肪とホエイを取り除いたもので、7時間から8時間かけてゆっくり吸収されるのが特長です。腹もちが良いので就寝1時間前に摂ると効果的です。睡眠中に成長ホルモンが分泌されますが、実はこのホルモンはタンパク質が主成分なのです。寝ている間にタンパク質が枯渇してしまうため、それを補う効果もあります」

 そして、ソイ(大豆)は、大豆に含まれるイソフラボンが骨や皮膚の形成を促すため、美肌などの美容目的で摂取する人が多いという。

 「商品に表示されている摂取量を必ず守ってほしいです。というのも、タンパク質は体が1度に吸収する量が多くても40gと言われています。それ以上摂ると脂肪過多になり、場合によっては胃腸を壊してしまうこともあります。私はアスリートのサポートをしていますが、プロテインを過剰に摂った結果、肝臓にダメージを抱えてしまった選手も少なくありません」

 プロテインは、あくまでも補助食品。食事代わりにしないでほしいという牧さん。

 「液体のプロテインに頼ってしまうと、結局は筋肉を壊してしまい胃腸が動きにくくなり、その結果、食事(固形物)が吸収されなくなることも懸念されます。ですから、あくまでも食事の補助だと考えてください」

 人体には不可欠なタンパク質だが、近年はその摂取量が低下しているとの調査結果もある。

 「忙しさのあまり、朝食をパンとコーヒーで済ませる方もいるでしょう。しかし、それでは炭水化物が中心となり、タンパク質不足になってしまいます。まずは栄養バランスの取れた食事を心がけ、必要に応じてプロテインを摂取することが大事です」(吉田由紀子/5時から作家塾(R)

5時から作家塾(R) 編集ディレクター&ライター集団
1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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