日本では春から秋にかけて梅雨、ゲリラ豪雨、台風による記録的な雨量により、毎年のようにどこかで水害が起きています。最近では「線状降水帯」が発生するなど、一昔前とは日本の気象状況が変わってしまった印象です。環境省では、気象変動にともなう気象災害(豪雨、猛暑等)が頻発していると報告しています。
地球環境が変化していくなかで、私達ができることには限りがあり、対策の効果が出てくるにも時間がかかります。今回は、火災や自然災害が発生した場合の損害保険である「火災保険」の内容の総点検について解説いたします。
■火災保険は落雷、台風、洪水、土砂災害にも備えられる
火災保険という名称から、火事の時に家をたて直すための保険と考えている人もいるでしょう。火災保険の補償対象となる事象は、火事だけに限りません。むしろ、自然災害から住宅や家財など、大切な財産を復旧するための保険だと考えたほうが良さそうです。
・落雷
最もシンプルな補償内容のプランであっても、補償対象となる自然災害の1つです。落雷は、積乱雲が発生しやすい夏場に多く、年間の落雷による被害は7月と8月に集中しています。住宅に落雷がおこれば、屋根(建物)に穴が空いたり、コンセントにつながっている家電製品(家財)が壊れるなどの損害につながることがあります。落雷が原因の火災も補償の対象となります。
落雷は家電製品に影響を及ぼす災害ですが、火災保険の補償対象は家屋と家財に分かれています。家屋には火災保険をかけていても、家財には保険をかけていない場合は、落雷で家電製品が故障しても保険金を受け取ることはできません。
家財に対する火災保険に追加で加入することもできますが、物理的な対策としては、コンセントを外すことが考えられます。
・風災
風災は突風、竜巻、台風など強い風が吹くと、屋根が飛んだり、剥がれたりします。また風で飛んできたもので窓ガラスが割れるなどの被害が考えられます。
突風を防ぐことはできませんが、突風から窓ガラスを守ったり、外部に物が飛ばないような対策は必要に応じて行いましょう。窓ガラスが割れてしまえば、雨をしのぐことが難しくなります。家屋の対策としてはシャッターを設置するなどが考えられるでしょう。突風の多い地域も存在しますので、家を買う際は確認しましょう。
・雹災
雹(ひょう)は、直径5ミリ以上の氷の塊をいいます。小さい場合はあられとなります。雹は塊が大きいため、春に農作物に被害を与えるニュースを見たことがあるかもしれません。雹の季節は5月、6月のようですが、積乱雲を原因としますので、夏場にも可能性があります。塊が大きければ家屋に当たれば損傷します。数センチの雹が降れば、屋根が傷ついたり窓ガラスが割れたりします。
雹災も多くの火災保険でカバーされていると考えられますが、ご自分の保険内容を確認しておくと良いでしょう。雹で家が全損になるような話は聞きませんが、小さいダメージを与える自然災害と考えるとよいでしょう。
・雪災
雪災は雪による損害を補償します。雪が重く家屋が倒壊した場合、倒壊まで至らなくても家屋が損傷した場合に役立ちます。豪雪地帯に限らず、雪に不慣れな地域であれば少ない積雪でも家屋が損傷することがあります。風災、雹災とセットで付帯しているケースが多いので、確認しておきましょう。
・水災
台風や豪雨などによる洪水や高潮、ゲリラ豪雨による内水氾濫、土砂崩れによる被害まで、水害に関する補償となるのが水災です。
洪水や浸水により建物が損傷したり、水浸しになることで壁の張替えなどの被害があり得ます。最近は土砂災害や洪水で家屋が流されてしまうニュースもみかけます。ハザードマップを確認する際は、洪水の他、内水氾濫、土砂災害と異なるハザードマップの確認が必要です。
水災を付帯すると火災保険料が大幅に上がるため、水災不担保としているケースもあるようです。ハザードマップを確認し、危険な地域に含まれている場合は、追加での加入を検討したほうがよいでしょう。
・盗難
自然災害ではありませんが、火事場泥棒や被災地泥棒などの被害も聞きます。避難中に泥棒被害に遭うなどの可能性もありますので、保険加入の際に検討してはいかがでしょう。
■自然災害による怪我に備えるには?
自然災害によって怪我をした場合、どのような保険が使えるのでしょうか。
まずは、公的保険として労災保険、健康保険が考えられます。仕事中の被災であれば労災保険が適用になる可能性が高いでしょう。仕事中でなければ、健康保険を使っての治療となります。
怪我で入院するような場合であれば、傷害保険や医療保険の入院給付金が支給対象となりそうです。怪我の症状が重く、将来的に身体に障害が残るような可能性もありますから、障害年金の受給可能性があることも覚えておくと良いでしょう。障害年金とは条件が異なりますが、障害者手帳を受け取れる可能性もありそうです。
怪我で働けなくなった場合は、傷病手当金の受給も可能性がでてきます。
自然災害が原因で亡くなった場合、生命保険の死亡保険金の他、災害保険金などの受け取り可能性もあります。災害時の保険金上乗せなどがあるかどうか、確認しておくとよさそうです。
自然災害に備える方法は、発生しやすい場所に近づかないということが最も大切です。それがかなわない場合は、損害保険での対応を検討すると良いでしょう。生命保険が役立つ場合もありますし、公的な社会保険が適用になるケースもあります。
今年も自然災害が増える季節になりました。自然災害は大丈夫という油断が生死を左右する場合があります。危険になる前に避難する、危険を感じたら近寄らないなど、心の準備も大切です。
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