鉄道業界インサイド

ダイヤ改正で大きく変わる東海道線 通勤ライナーの特急“昇格”その是非は…

枝久保達也

 国鉄時代の185系定期運用終了

 恒例の春のダイヤ改正が3月13日に行われる。今年のダイヤ改正は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、終電時刻の繰り上げや朝ラッシュ時間帯の運行本数の見直しなど暗いニュースが多いが、東海道線(東京口=JR東日本区間)の特急列車の運行形態が大きく変わるというトピックスがある。

 東海道線の特急列車は2020年3月まで、185系特急型車両を用いた「踊り子」と、251系特急型車両を用いた「スーパービュー踊り子」の二本立てで運行されていたが、2020年3月14日のダイヤ改正で251系車両が引退し、新型特急型車両E261系を用いた「サフィール踊り子」の運行がスタートした。

 E261系は1号車にプレミアムグリーン車を設定。4号車に食堂車(カフェテリア)を備え、麺類や菓子類を提供する新しいスタイルが注目されたが、カフェテリアは新型コロナの影響で現在は営業を休止している。

 また185系に代わって、中央線で特急列車として運行されてきたE257系特急型車両のリニューアル車の投入が始まっており、今回のダイヤ改正で185系の置き換えが完了。E257系による「踊り子」と、E261系による「サフィール踊り子」の二本立てとなり、ともに第二世代に突入することになる。

 185系は従来の急行「伊豆」で使用されていた153系急行型車両を置き換えるために製造され、1981年から東海道線に導入された。同年10月に急行「伊豆」と特急「あまぎ」は、L特急「踊り子」に統一され、現在の運行形態の原型が形作られる。

 1982年から高崎線などにも導入を開始し、急行(のちに新特急)「あかぎ」や特急「白根」、また東北・上越新幹線の大宮開業時には大宮と上野を接続する「新幹線リレー号」として運行された。

 185系は国鉄末期の厳しい財政状況を反映し、車両の有効活用を図るため、特急型車両でありながら普通列車としても運用することを想定した設計だった。しかし、2ドアデッキ付きの特急型車両を朝夕の通勤ラッシュに用いることは現実的ではなく、普通列車としての運用は縮小されていく。

 代わって価値を見出されたのが、朝夕の通勤ライナーとしての運行である。国鉄は1984年6月、東北本線で特急列車の折返し回送列車を一部開放した「ホームライナー」の運行を開始した。これが評判となり、各路線へと拡大されることになった。

 東海道線では1986年11月から朝の上り方面と夕・夜間の下り方面で「湘南ライナー」の運行を開始し、これに充当されたのが185系であった。185系は伊豆半島への旅行者向けには「踊り子」として、東海道線の通勤客向けには「湘南ライナー」として、二つの顔を使い分けながら40年にわたって走り続けてきたのである。

 消えるライナー…料金ほぼ倍の「落とし穴」も

 現在、東海道線の通勤ライナーは東京駅発着の「湘南ライナー」が上り6本、下り9本、新宿駅発着の「おはようライナー新宿」「ホームライナー小田原」が上り3本、下り2本が設定されているが、今年3月のダイヤ改正で185系の引退とともに東海道線の通勤ライナーも廃止となり、特急「湘南」が運行を開始する。

 「湘南」は東京駅発着の列車が上り6本(他に品川駅到着の上り列車が1本)、下り9本、新宿駅発着の列車が上り3本、下り2本となっており、事実上「湘南ライナー」を特急に格上げした形となっている。「湘南ライナー」同様、一部列車が東海道貨物線や横須賀線を経由して運行されるのも変わりない。

 「踊り子」と「湘南」には、常磐線や中央線で導入されている、普通車の全席において事前の座席指定が可能となるほか、座席の指定を受けなくても空席を利用可能な「新たな着席サービス」が導入される。

 一方、これまで全区間520円均一だったライナー券が、50キロまで760円、100キロまで1020円の特急券となるため、特に東京駅から大船駅以遠への利用者にとっては料金がほぼ倍になるという「落とし穴」もある。指定席化で利用しやすくなったと評価されるのか、あるいは利用を控える動きにつながるのか、利用者の動向に注目したい。

枝久保達也(えだくぼ・たつや) 鉄道ライター
都市交通史研究家
1982年11月、上越新幹線より数日早く鉄道のまち大宮市に生まれるが、幼少期は鉄道には全く興味を示さなかった。2006年に東京メトロに入社し、広報・マーケティング・コミュニケーション業務を担当。2017年に独立して、現在は鉄道ライター・都市交通史研究家として活動している。専門は地下鉄を中心とした東京の都市交通の成り立ち。著書に「戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団」(青弓社)。

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