クルマ三昧

すぐそこに迫る自動運転の時代 先進の運転支援技術に舌を巻いた

木下隆之

 自動運転は「レベル2」から「レベル3」へ

 自動運転の時代がもうすぐそこまで迫っている。このところ徐々に増えている高度な運転支援技術搭載車に触れると、時代の急速な流れを実感するのである。

 国土交通省が提案するロードマップでは、自動運転のレベルは5段階に分けている。

 「レベル1」は、ごく初期の運転支援レベルにとどまる。障害物を認識した上で、自動で停止、先行車を追尾し、レーンキープといった車線をはみ出さないシステムがそれだ。数年前ではごく一部の高価なモデルに限定された装備だったが、近年ではコスト制限のある軽自動車にも搭載されている。高齢者によるアクセルペダルの踏み違いなどに端を発した安全意識の高まりを受け、運転支援装備を公表するメーカーも少なくない。

 「レベル2」になれば、さらにオートドライブは進む。前を走るクルマの速度に合わせて加減速するばかりか、遅いクルマがいれば自動で追い越しもする。スバルが力を入れる高度運転支援システム「アイサイトX」などはその技術が盛り込まれている。高速道路の分岐や合流もこなすのは日産の「プロパイロット2.0」だ。追走は時速100キロまで許容するというから、自動運転に限りなく近いといえよう。

 「レベル3」はさらにそのシステムを推し進めている。瞬時にドライバーが反応できる態勢にいることが条件だが、ドライバーはステアリングから手を離すことが可能なのだ。ハンズフリーは「レベル2」でも可能だが、より限定範囲が広がる。

 「レベル4」ともなれば完全自動運転である。地域限定の無人自動運転も含まれるから、たとえば無人の路線バスの運行も考えられるし、過疎地での送迎も予定されている。

 「レベル5」はもはや車内はリビングと化す。乗員は安全を確認せずともクルマは目的地に移動する。読書しながらの移動も許されるのである。

 とこのようにレベル分けされているのだが、現在のところ「レベル2」が現実的であり、「レベル3」に足を踏み入れたというのが正解だろう。

 先日、日産「スカイライン」に採用されているプロパイロット2.0、あるいはスバルのアイサイトX、そしてBMWのドライビングアシストを経験して、自動運転の世界がもうすぐそこに迫っていることを感じた。

 渋滞も苦にならないハンズフリー走行

 BMWのハンズフリーは、時速60キロ以下という条件付きだが、極めて現実的な社会で活用が可能だ。高速道路限定ではあるものの、ストップ&ゴーを繰り返すような渋滞ではとても都合がいい。ドライバーはステアリングから手を離したままでいい。

 速度を設定しておけば、その速度の範囲で前車に等間隔で追従する。前車が停止すれば自車も停止し、前車が発進すれば自然な感覚で自車も発進する。もちろん車線を認識しているから、レーンを逸脱することもない。

 感心するのは、装置の設定が簡略化されていることだ。ドライビングのアシストスイッチに触れるだけで、瞬時にハンズフリーに移行可能なことだ。しかも、車間距離を厳格に守ろうとはせず、つまり、人が自然にそうするように、前車との速度調整を穏やかに、多少ルーズに作動するのである。前車が急激に発進したからといって急加速しようとはしない。減速の感覚も穏やか。極めて厳格に管理された不感帯が盛り込まれているのである。

 これなら渋滞も苦痛ではない。それが証拠に、流れの悪い高速道路を走行中、時速60キロ以下の渋滞にならないものかと期待したほどである。もうすぐそこに、自動運転が迫っている。

木下隆之(きのした・たかゆき) レーシングドライバー/自動車評論家
ブランドアドバイザー/ドライビングディレクター
東京都出身。明治学院大学卒業。出版社編集部勤務を経て独立。国内外のトップカテゴリーで優勝多数。スーパー耐久最多勝記録保持。ニュルブルクリンク24時間(ドイツ)日本人最高位、最多出場記録更新中。雑誌/Webで連載コラム多数。CM等のドライビングディレクター、イベントを企画するなどクリエイティブ業務多数。クルマ好きの青春を綴った「ジェイズな奴ら」(ネコ・バプリッシング)、経済書「豊田章男の人間力」(学研パブリッシング)等を上梓。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】こちらからどうぞ。YouTubeの「木下隆之channel CARドロイド」も随時更新中です。