健康カフェ

(193)腎臓を守るためにやるべきこと

 日本の糖尿病患者数は近年大幅に増え、1千万人程度と推計されています。実は腎臓が悪いという人もかなりいて、慢性腎臓病の患者数は糖尿病を超える1300万人と推計されています。糖尿病が悪い状態が続くと腎臓まで悪くなります。腎機能の低下が進めば最終的には人工透析を受けることになりますが、近年では新たに人工透析が必要になる人の4割以上が糖尿病による腎臓病です。

 糖尿病で通院している60代前半の男性患者さんは、腎機能が年々悪くなってきています。通常、糖尿病で腎機能が低下していくのは糖尿病がうまく管理できず血糖値の高い状態が続いていることが多いのですが、私のクリニックに通院するようになってからの3年間は血糖値が安定しています。本人に過去の治療経過を聞いてみたところ、以前は血糖値が相当高かったが長期間きちんと治療を受けていなかったと教えてくれました。

 この患者さんのように、今は血糖値が良好でも過去に高血糖が長く続いていたような場合、後々腎障害が進んでしまうことがあります。糖尿病で腎臓や目を悪くしないようにするためには、発症後の早い段階での血糖コントロールが特に大切だということも分かっています。糖尿病やその疑いがあるかどうかは健診を受ければ大抵分かります。糖尿病と診断されたら、早いうちからしっかり治療に取り組むことが勧められます。

 糖尿病の腎障害では、尿にタンパクが出るようになるのが典型ですが、尿タンパクが出ないものもあることが分かってきました。そのため、血液検査で血糖値の指標だけでなく、腎機能の指標となる血清クレアチニンなどの数値を定期的にみていく必要があります。

 腎臓病の悪化を防ぐためには血糖値を上げないことのほか、血圧を下げる、禁煙、体重を増やさない、適度に運動する、塩分摂取を減らすといったことも大切です。男性患者さんは、過去は悔やんでも仕方がないからと、今できることを一生懸命やっています。「妻にはそんなに長生きしなくていいとからかわれる」と笑いながら帰っていきました。

(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)

=次回は2月11日掲載予定