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(179)運動しても膝関節炎は心配ない

 人は長生きするようになって、長く人生を楽しめるようになった半面、いろいろな病気や症状に悩まされる可能性も出てきました。足腰の痛みというのも、その一つでしょう。

 高血圧などで通院する50代前半の女性患者さんは、運動することにあまり乗り気でありません。もともと運動は嫌いではないようですが、以前、膝に痛みが出たことがあり、再燃することを心配しているようです。しかし、最近は体重が増え、血圧も上がってきているので、どうにかしないといけないという思いはあるようです。

 膝関節に痛みが出る代表的な病気に変形性膝関節症があります。これは膝関節の軟骨が減ってしまうことで滑らかさが失われ、痛みや炎症が起こる病気です。たくさん運動して膝を使いすぎると、早くから膝関節症になってしまいそうな気もしますが、どうやらその心配はあまりなさそうです。

 激しい運動や、逆に座っている時間が長いことが、膝関節症の発症に及ぼす影響について調べた研究結果が5月、米医学誌に発表されました。この研究では、まだ変形性膝関節症のレントゲン所見がないが、発症の恐れのある45~79歳の男女約1200人を対象に、10年間の経過で膝関節症の発症の頻度を調べています。対象者はテニスや水泳、スキーといった運動をどれくらいしているかということで4群に、また座って過ごす時間の長さで3群に分けて評価しています。結果は激しい運動を多くする人でも、変形性膝関節症の発症は増えていませんでした。一方で長時間座っていることもまた、発症を増やすものではありませんでした。より高齢であったり肥満度が高かったりすると、激しい運動が減り、座って過ごす時間が長くなっていました。

 日常を非活動的に過ごすことは、心血管病や認知症を増やしてしまう可能性があり、寿命も短くなってしまう恐れがあります。もともと運動が好きな人は、使いすぎて足腰が悪くなるという心配はせず、いつまでも楽しく続けてよさそうです。運動慣れしていない人は、楽しめるスポーツで少しずつ体を慣らしていってください。(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)

 =次回は7月9日掲載予定