「スクール」でも休校はせず
私が住む東京でもようやく緊急事態宣言が解除されました。全世界が、新型コロナウイルスの影響を受け始めた今年のはじめから、長い道のりを歩んできました。コロナが完全になくなるわけではありませんが、6月からは少しは日常が戻るのでしょうか。
誰もが初めて経験するこの状況に、家族の一員として、会社の一員として、学校の生徒として、それぞれ置かれた状況とどのように向き合い付き合うか模索してきました。答えがない中で、大変だったと思います。
私たちが運営するGGインターナショナルスクール(GGIS)の「ナーサリー・キンダー」は、自治体の区分では保育所(保育園)、「アフタースクール」は民間学童保育に該当します。緊急事態宣言が発令された後も、働く保護者のために、試行錯誤しながらも休まず運営してきました。その中で、心が温まるできごとがありました。
注文したマスクが届かない!
マスク不足で苦労された方も多いと思いますが、私たちの学校(GGIS)もマスクが手に入らず困った時期がありました。
世界保健機関(WHO)は、使い捨てのマスクについて「一度使用したマスクは再利用してはならない」としています。保育園や学校でマスクを正しく清潔に使おうとすると、日々多くのマスクを消費します。運営側としては、緊急事態宣言が発令されている中で感染のリスクを負いながら働き続けてくれる先生たちに必ずマスクを配布してあげたい…と当然ながら思います。
でも、注文したマスクが届かない!
時間があるときには、自らドラッグストアに並んで購入したりもしていました。やむを得ず、先生たちには、「場面によって、優先順位をつけて有限の資源を大切に使ってほしい」とお願いしていました。それでも、注文したマスクが届くまでの期間、在庫が足りるか…足りないか…と不安でした。
感染が広がる中、従業員に対してマスクを用意することは社長である自分の責任だと考えていました。そこで、在籍する生徒の保護者に「自宅に余ってるマスクがあれば寄付して頂きたい」と思い切って協力を仰ぐことにしました。多くの人がマスク不足で困る中、こんなお願いしてもよいのか、無神経だろうか…という迷いはありましたが、必要なものは必要、見栄を張っている場合ではないと思い決めました。
すると、なんと翌日にはたくさんのご声援とともにたくさんのマスクが届いたのです。
とあるご家族からは、「学校に対してどう貢献できるか迷っていたところ! 聞いてくれてありがとう」という想像を遥かに超える温かいお言葉を頂きました。休学中の生徒の保護者からは、「マスクを直接は届けられないけど、医療施設や福祉施設に対してのみマスクを販売していているところを知ってる」と業者をご紹介頂きました。「他に足りてないものあったら教えて!」とまで言ってくださり、目頭が“熱々”になりました。
物資の寄付に救われたというのはもちろんありますが、このような時期だからこそ、先生たちにとって、保護者の応援の声がどれほど勇気につながったかは、言うまでもありません。感謝してもしきれないです。
普段から、生徒だけでなく、保護者ともそのような信頼関係を築いてくれていた先生たちにも感謝です。学校を信頼してくれて、応援してくれた保護者にも感謝です。
「蜜」は避けれない保育の現場
新型コロナウイルスの感染防止対策は熟知していますが、実際、保育ではそれを徹底できない場面がよくあります。
写真のように「蜜」な状態になることもしばしば。赤ちゃんを抱っこしていれば、マスクが気になるのか(特にゴムの部分!)、剥ぎ取られてしまいますし、顔面にくしゃみをされたりもします。べろっべろに舐め回したおもちゃを振り回していたり(笑) 保育現場でなくても、赤ちゃんのお世話をしたことある方には容易に想像がつくのではないでしょうか。
私たちの学校の一番大事な基本理念は「ONE FAMILY(大きな家族)」です。お父さん・お母さんや兄弟が接するように、子どもたちを愛し、見守りたい。互いに触れ合い、じゃれ合うことは、子どもたちの成長と健康な心のためには必要だと考えています。
国連は、新型コロナウィルスにおける子どもの感染率はこれまでのところ、幸いにも「非常に低い(far milder)」という見解を示しています(4月16日発表の国連報告書)。そのため、私たちも、子どもたちに過度にソーシャルディスタンスを保つことを徹底していません。
私たちが今できることを
子どもたちが笑顔でいることは、長期的な観点ではなによりも重要です。しかし、コロナの影響でお父さん・お母さんの働き方が変わり、週末はいつものようにお出かけできるわけではありません。せめて学校にいる間は、思いっきり遊んで、思いっきり笑って過ごしてほしいです。
開校の傍ら実施しているオンライン授業(前回記事)も、自宅保育を余儀なくされているご家族や、週末に出かけられない子どものために少しでもなにかできないかと始めた取り組みです。
限られた条件の中でも、子どものための環境を整備すること。これが、私たちがいまできる精一杯の貢献だと考えています。
【グローバルリーダーの育て方】は、100%英語環境の保育園やアフタースクールを経営する女性社長・龍芳乃さんが、子供が世界で通じる「人間力」「国際競争力」をどう養っていくべきかを説く連載コラムです。アーカイブはこちら