「走るときは横並びで」ジョギングにも周囲への配慮必要 専門家に聞く

 
運動不足の解消に効果的なジョギング。だが新型コロナ感染を防ぐには相応の配慮が必要となる=大阪市都島区(恵守乾撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大で不要不急の外出自粛が求められる中、運動不足やストレス解消のためにジョギングに取り組む人が少なくない。一方で政府の専門家会議は4月22日、感染防止のためにジョギングは少人数で行うよう求めた。感染のリスクを避け、安全にジョギングを楽しむにはどうすればいいのか。専門家に聞いた。(岡野祐己、宇山友明)

 走るときは横並びで

 感染を避けるために重要とされる密閉、密集、密接の「3密」。ジョギングが好まれるのも、屋外での運動であれば「密閉」に当たらないことも大きな理由だとみられる。

 では「密集」はどうか。日常生活で飛沫感染を防ぐためには人との間に約2メートルの距離をとることが推奨されているが、国立病院機構仙台医療センターの西村秀一ウイルスセンター長(64)は「人から出た飛沫は水分の重さで約1~2メートル先で落下するからだ」とその理由を説明する。

 ただジョギングの場合、飛沫は気流に乗って10メートル後方を走る人にも届く可能性があると、オランダとベルギーの大学の共同研究で指摘された。だが西村氏は「風で吹き流されるうちに飛沫の密度は下がる。仮にランナーが前後に並んで走っていても、2メートル離れていれば感染確率は低い」と懐疑的だ。

 一方で「横並びで走った方が感染リスクは下がるのは事実。神経質になりすぎず、ウイルスを正しく恐れることが大切だ」と指摘した。

 信号待ちに注意

 ただ、ジョギング中であっても「密接」の条件を満たしてしまう可能性はある。西村氏も「信号待ちの際などに、固まって談笑するのは避けるべきだ」と強調する。

 「人が少ない場所を選んで走るか、しっかり距離をとるのが大事」と指摘するのは、1991年に陸上世界選手権の男子マラソンで優勝した谷口浩美さん(60)。

 現役を退いて20年以上がたつ今も宮崎市内の自宅付近でジョギングしているが、最近は公園や市街地に比べ他のランナーと顔を合わせる機会が少ない堤防上のコースを選んでいるという。「周囲に人が少ないのでストレスなく走ることができるし、感染の心配をする必要もなくて済む」と話す。

 エチケット守って

 もちろん、自身の感染を防ぐだけでなく、無症状のうちに人にうつしてしまうことも避けねばならない。谷口さんも「この状況では、体調に少しでも異変があった日はジョギングをやめるのが絶対に必要なマナー」と話す。

 各地のマラソン大会に参加する市民ランナーでもある京都大iPS細胞研究所長の山中伸弥さん(57)は、自身が開設した新型コロナウイルス情報発信サイトで「「ジョギングエチケット」と題し、「せきやくしゃみと同じように、走って大きな息をするときも周囲に配慮が必要」と提言。動画配信サイト「YouTube」では、走るときもマスクを着用するよう勧めるとともに、マスクが苦手な人は代わりに布で口元を覆うように呼びかけている。