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改正健康増進法が来月に全面施行 公園で一服、ポイ捨て増加→苦肉の喫煙所復活

 受動喫煙対策を強化する改正健康増進法の全面施行を4月1日に控えるなか、市役所などでいったん撤去した喫煙所を復活させる動きが出ている。行き場をなくしたスモーカーが近くの公園に吸いに行ったり、たばこのポイ捨てが相次いだりして住民から苦情が出たためだ。「復活はやむを得ない」との声もあり、徹底の難しさが浮かぶ。

 2月下旬、9階建ての岡山市役所屋上。白線で囲われた一角の灰皿周辺で職員ら十数人が一服していた。

 改正健康増進法は昨年7月に一部施行され、行政機関の庁舎や学校などは敷地内が原則禁煙となった。岡山市はこれに合わせ、市役所の灰皿を撤去。ところが、喫煙する職員が隣の公園に行き、利用する親子連れなどから副流煙の苦情が届くようになった。

 そこで市はやむなく屋上に喫煙所を再び設置。「屋外で受動喫煙防止の措置を取った場合は設置できる」という改正法の例外規定を活用した。担当者は「時代に逆行していると言われるかもしれないが、法律が求める理想と現実の間にはまだギャップがある」と悩ましげに話す。

 隣の公園に孫と立ち寄った女性(58)は「子供の受動喫煙は気になる。たばこを吸わない流れがもっと進んでほしい」と話した。一方で、屋上で喫煙していた男性職員は「吸える場所が今はあまりにも少ないので助かる。喫煙者にも配慮してもらえると、ありがたいんだけど…」と漏らした。

 吸い殻のポイ捨てに悩まされるケースもある。

 山口県岩国市は、JR岩国駅周辺の路上にあった喫煙所を昨年7月に撤去。一般的な場所での屋外喫煙についても周囲に配慮を求める改正法の規定を受けた対応だったが、場所によってはポイ捨てが前年同期比で2割増となった。観光協会などから対策を求められ、煙が漏れないボックス型などの喫煙所を設置する考えだ。市は「ポイ捨てや受動喫煙対策になる。あくまで禁煙を進める中での暫定措置だ」と説明する。

 ただ、「暫定」のはずが長期化している例もある。熊本県警の運転免許センターは昨年7月、敷地内の屋外喫煙所をなくしたが、芝生へのポイ捨てや敷地外での喫煙が相次いだため、同8月に再設置。「1カ月間の暫定措置」としていたが「ポイ捨てが少なくなるなどの効果が見られる」と半年以上経過した現在も残している。

 こうした動きの是非について厚生労働省の担当者は「望まない受動喫煙をなくすため、適切な対応をお願いしたい」とする。日本禁煙学会の作田学理事長は「禁煙を進めるべきだ」と強調した上で「喫煙所を設置するのなら、休憩時間だけの開放や看板で禁煙を啓発するといった工夫が必要だ」と指摘している。