新型肺炎で広がる差別 不当な扱い、ネット中傷…相模原中央病院関係者ら困惑
新型コロナウイルスの感染者が確認された病院で、関係者や家族が、日常生活で他人から差別的な扱いを受けたり、インターネット上で誹謗中傷を受けたりするなど、感染拡大を端緒とする波紋が広がっている。相模原中央病院(相模原市中央区)は18日、「いわれのない扱いを受けている」などと訴える文書を公表。市も「過剰反応せず、冷静に対応してほしい」と呼びかけ、差別への警鐘を鳴らしている。
新型コロナウイルスに感染し、国内で初めて死亡した80代女性の入院後、その病室を担当した40代女性看護師の感染が判明したのが16日。この日を境に、同院の診察をめぐる環境は急変した。
「登園遠慮して」
院内で感染者の確認が相次ぐこととなった同院では、誹謗中傷を受ける関係者が続出。悲痛の声を受け、同院は「職員やその家族が、いわれのない差別的扱いを受けている」などとする文書を公表した。
文書などによると、同日に女性看護師の感染が判明して以降、一部の託児所から受け入れを拒否されたケースが数件あるほか、学校から子供の自宅待機の指示が出ていることなどを背景に、出勤できる看護師が少なくなっている。
ある看護師は子供を保育施設に預けようとしたところ、子供の検査の実施の有無を確認され、「安全なんですか」「しばらくは遠慮してもらえないか」と拒まれた。同院関係者は「患者を受け入れている他の病院でも、ネット上で病院名が明らかにされ、同様の事態が起きていると聞いている」と肩を落とす。
ほかにも、ある看護師の家族が勤務する会社では、社内に親族が同院に勤務している情報が伝わり、出勤しないよう求められたり、一部の納品業者には「病院の玄関先でのやりとりにさせてほしい」などと求められたりしたという。
診療再開見通せず
また、これまで他の医療機関から派遣された医師に手術などを手伝ってもらっていたが、「リスクがあり、派遣できない」と通告された。現在は、常勤医と看護師が入院患者やかかりつけの患者に対応しているが、「医師が不足している状態」(同院)で、患者の転院も受け入れを断られる事態となっている。
同院関係者は「感染を恐れての判断ということは理解するし、やむを得ないこと。だが、病院の再開にも影響してきており、どう行動し、対策すべきなのか、しっかりと国に指針を示してほしい」と話す。休診している外来診療の早期再開を目指すが、見通しは立っていない。
ネット上でも、同院に対する心ない誹謗の声が散見される。「近所なので恐怖しかない」「かかりつけの病院なのでこわい」などの発信や、感染者が入院する病院名などがアップされている。
感染者と接触ない
死亡女性と女性看護師が感染したことを受け、市保健所は、17日までに2人と接触した医療従事者と患者計69人を検査した。結果、全員が陰性と分かり、事態はいったんは落ち着きを見せたかに思われた。
だが、その後、2人と直接的な接触が確認されていない患者の感染が判明する。80代男性と70代男性で、2人は同じ部屋に入院していた患者だった。当初の検査では、感染者との接触が確認されなかったため、対象外だったという。
市によると、死亡女性が別の病院に転院した6日、その約2時間後に80代男性が同じフロアの病室に入院。17日に男性が発熱し、肺炎と診断されたため、翌日に検査を実施したところ陽性と判明。同室の70代男性も検査を行った結果、感染していることが明らかになった。
また、死亡女性が入院していた時期に同じフロアで入院していた別の80代男性の感染も判明。その後、すでに退院していた別の80代男性や80代の妻の感染も確認され、感染拡大には歯止めがかからない。
市の担当者は「院内感染の可能性も含めて調査を進めている」と話す一方で、「今後、感染に対して、過剰と思える懸念はせずに、市民の方々には、冷静に適切な予防対策に取り組んでいただきたい」と話している。
関連記事