【大学発 日本 人と技術】日本を支える研究活動と技術開発
■心肺停止患者への電気ショック 適用可否の判定性能を大幅向上
≪東京都市大学≫
心肺停止患者に電気的除細動(電気ショック)を適用すべきかを判定するシステムの構築を進めている知識工学部情報科学科の大屋英稔教授らはこのほど、研究開始当初に比べて識別性能が、正常洞調律については100%、心室細動/心室頻拍と無脈性電気活動については95%以上と大幅に向上したことを確認した。
自動体外式除細動器(AED)は、心室頻拍など2[Hz]以下の低周波数帯域の識別が困難だが、今回は心肺停止患者の心電図波形をウェーブレット変換し、各周波数成分のもつエネルギーの強弱を色の濃淡で出力するスカログラムから、同波形を特徴づけるパラメータを抽出することで、識別性能の向上が可能となった。
今後も高性能化・高速化を図り、将来的にはAEDに研究成果を実装することで、蘇生率向上に役立てたい考えだ。
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■日間賀島の自動運転社会実証事業に協力
≪埼玉工業大学≫
1月25日から3日間、愛知県日間賀島で開催された自動運転社会実装実証事業の実証実験に協力した。今回は住宅団地・郊外モデルとして、離島における観光型MaaSによる移動をテーマに自動運転の実証実験が行なわれた。同島の外周道路(約3.62キロメートル)の公道を高速船発着点の西港を起点として自動運転バスが走行、大村秀章愛知県知事はじめ、日間賀島住民や一般観光客、あいち自動運転推進コンソーシアム会員などが試乗した。
今回の実験はNTTドコモを核とする共同体事業体で実施され、本学は自動運転AI(AIPilot/Autoware)を実装した自動運転バスを提供し、運行を担当する名鉄バス運転手の訓練と指導、また埼工大発ベンチャーのフィールドオートが自動運転のオペレータを派遣した。
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■日本航空と連携した指定校推薦コース開設
≪工学院大学≫
先進工学部機械理工学科に設立した航空理工学専攻に、JALとの連携による「エアラインパイロット指定校推薦コース」を開設した。
私大のパイロット養成課程からエアラインパイロットに志願するには、商用パイロットに求められる事業用ライセンスまで取得するのが主流。本コースでは、事業用ライセンスの前段階となる自家用操縦士および計器飛行証明ライセンスのみを米国FAAで取得、技量確認試験に合格すると、JALの自社養成パイロット採用選考時に本学推薦の有資格者として受験が可能となる。さらに学生が負担する訓練費を低く抑え、操縦訓練開始前にエアライン基準の航空身体検査を受検できることも大きな特徴。
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■高齢者に優しいグリーンスローモビリティ
≪広島工業大学≫
工学部環境土木工学科の今川朱美准教授の研究室は昨年10月、広島県廿日市市浅原地区で、ゴルフカートを改造した電動自動車「グリーンスローモビリティ」の実証調査を行った。学生6人が交代で運転し、中心部の浅原交流会館を発着点に約2~3キロメートル離れた3つの集落に向けて1日4、5往復、計約180往復運行した。利用者(片道換算)は延べ238人で、大半の利用者が移動手段として便利と答えた。
同地区は人口586人で高齢化率は50.5%。路線バスは走っておらず、調査中は中心部での体操教室や移動販売車などに気軽に外出していたという。今川准教授は「調査で課題も見えた。高齢化は待ったなしなので市は導入へ乗り出してほしい」と話している。
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■「AI実践フォーラム2019」開く
≪大阪電気通信大学≫
ICT社会教育センターは昨年末、AIの活用について機械学習技術と知識記述を総合的に学ぶ講座「AI実践フォーラム2019~各種機械学習ツールと知識記述との連携に向けて~」を駅前キャンパスメディアセンターで4回開催した。今回のフォーラムでは、データから合理的な判断を下す機械学習技術を学ぶことを目的とし、最新のAIツール群を実際に体験する形で実施。AI活用に興味を持つ社会人や初等中等学校の教員らが参加し、最先端の技術や知識に触れた。ICT社会教育センターは情報通信分野の技術者教育や専門知識の教育が課題となる中、学校や企業における情報教育に貢献し、超スマート社会(Society5.0)の到来に備えた人材育成に取り組んでいる。
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■脳波・心拍センサーで精度良く感情を推定
≪芝浦工業大学≫
工学部情報工学科の菅谷みどり教授は、生体信号(脳波、心拍)の簡易計測により、人の感情を推定する手法を考案した。覚せい、眠気と快、不快の2軸上に、感情分類を行う心理モデル「ラッセルの円環モデル」の脳波、心拍を計測したセンサー値をプロットすることで感情を推定する。
生体信号の計測値を用いることで、リアルタイムに人の感情を推定することが可能となる。この推定をもとに、気持ちに応じた声がけを行う声がけロボットやパーソナルスペースを考慮したロボット、介護支援ロボットなど、さまざまな応用を目指していく。このほか、ストレス軽減のための機器・製品開発など、幅広い応用が期待できる。この技術を使って、AIやIoTを活用した心のモデル化についても研究を進めている。
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■高性能半導体デバイスの研磨にAI活用
≪金沢工業大学≫
工学部機械工学科の畝田道雄教授の研究グループは、さまざまな分野で需要が拡大している高性能半導体デバイスの製造に欠かせない研磨プロセスの新たな制御手法として、ニューラルネットワークを用いたAIによる知能研磨システムを提案し、精密工学会が発刊する学術機関誌『精密工学会誌』に学術論文として掲載された。
半導体デバイスの製造の中でもデバイスの性能を直接左右する研磨プロセスは制御が困難とされていたが、AIによる知能研磨システムは研磨特性の制御を目的としたプロセスの自動決定を可能にする手法として期待されている。今回提案した研磨システムはサファイアのCMPにおける研磨レートと研磨パッド表面性状、コンディショニング条件の影響に関する結果などを学習データセットに取り入れ、NNを用いて所望する研磨レートを数%程度の誤差で取得することに成功。AI導入の有用性を示した。
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■IgG4疾患で臓器障害のメカニズム解明
≪東京理科大学≫
生命医科学研究所分子病態学研究部門の久保允人教授らの研究グループは、肝臓や腎臓などの臓器、血管、涙腺、唾液腺など全身のさまざまな組織に腫れや炎症を生じる原因不明の難病「IgG4関連疾患」について、臓器に強い炎症が生じるメカニズムを明らかにした。
IgG4関連疾患は、日本では8000~20000人の患者がいるとされているが、発症や増悪に関するメカニズムは不明な点が多く、厚生労働省から難病指定されている。
今回の久保教授らの研究では、マウスを使った実験により、血中にIgG4抗体が存在すると、免疫系の細胞の一つで異物を破壊する能力を持つ「細胞傷害性T細胞」による組織侵害の程度が大きくなり、組織の炎症が増悪することを発見した。これにより、IgG4関連疾患に特徴的である強い炎症は、IgG4抗体と細胞傷害性T細胞の相乗効果による可能性が示唆された。IgG4疾患における炎症反応のメカニズムの一端が解明されたことにより、IgG4抗体を減らすことや、細胞傷害性T細胞の機能を落とすことなど、複数の治療戦略の可能性が提示された。今後、新たな治療法の開発につながっていくことが期待される。
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【ガイド】
工学院大学 E-mail:gakuen_koho@sc.kogakuin.ac.jp
芝浦工業大学 E-mail:koho@ow.shibaura-it.ac.jp
千葉工業大学 E-mail:cit@it-chiba.ac.jp
東京電機大学 E-mail:keiei@jim.dendai.ac.jp
東京理科大学 E-mail:koho@admin.tus.ac.jp
東京都市大学 E-mail:toshidai-pr@tcu.ac.jp
大阪工業大学 E-mail:kikakuka@ofc.oit.ac.jp
大阪電気通信大学 E-mail:kouhou@mc2.osakac.ac.jp
金沢工業大学 E-mail:koho@kanazawa-it.ac.jp
豊田工業大学 E-mail:s-koho@toyota-ti.ac.jp
広島工業大学 E-mail:kouhou@it-hiroshima.ac.jp
愛知工業大学 E-mail:d-koho@aitech.ac.jp
埼玉工業大学 E-mail:kikaku@sit.ac.jp
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