2800万人がやってくる大阪万博 食や緑化も“ビジネス”に

 
新しいビジネス誕生が期待される大阪・関西万博の会場イメージ(経済産業省提供)

 2025年大阪・関西万博に向け、企業の新ビジネス創出を支援する動きが相次ぎ始まっている。国内外から約2800万人が訪れる万博会場は、新技術や商品を宣伝する絶好の機会で、訪日外国人客(インバウンド)の増大で会場外でも新たな事業機会が期待される。開催地となる大阪・夢洲では統合型リゾート(IR)の誘致も計画され、企業は万博後も見据えた事業展開に関心を寄せる。(黒川信雄)

 企業からアイデア募集

 「万博で採用される事業アイデアはどのように応募すればよいのか」(商社)「支援プロジェクトはあるのか」(メーカー)

 万博の運営を担う日本国際博覧会協会が2019年11月に開催した「第1回ピープルズ・リビング・ラボ(PLL)促進会議」では、万博への参画に関心を寄せる企業からの質問が相次いだ。

 PLLは、「未来社会の実験場」である万博会場で紹介される新たな技術や事業案を企業から募る狙いがある。今年1月末までアイデアを募集し、その後協議を進め、同年秋にまとめる万博の「基本計画」に盛り込む予定だ。同協会の石毛博行事務総長は「魅力ある万博を開催するには企業や自治体の幅広い協力が不可欠。万博会場を、新技術を実証する“巨大な装置”として活用してほしい」と訴える。

 食や緑化もビジネスに

 万博会場で紹介される新技術や事業以外にも、万博開催を機に新たなビジネスを生み出そうとする動きがある。

 「万博を見据え、オール大阪で“食”のブランド向上に取り組む新組織を設置する」

 大阪商工会議所の尾崎裕会頭は2019年11月下旬に大阪市内で会見し、大阪観光局と共同で海外の富裕層を主要ターゲットとする新組織「食創造都市 大阪推進機構」の立ち上げを発表した。

 大阪の食はお好み焼きやたこ焼きなど「安くてうまい」イメージが定着する一方、インバウンドの1回の旅行における大阪での飲食費の消費単価は131ドル(約1万4千円)で、東京の202ドルに大きく差をつけられている。

 そのため新組織は、インバウンドが増える万博を視野に、大阪の食に関する情報を発信する料理コンクールや、世界的な著名料理人、美食家、海外メディア関係者らが集まるイベント開催などを通じて、ブランド力を高めていく狙いだ。

 また、大阪観光局は万博を機に「緑化」を新ビジネスとして育成する試みを始めた。大阪市内などの緑化事業を手掛ける一般社団法人「テラプロジェクト」(理事長=小林昭雄・大阪大名誉教授)と共同で、「農業」「観光」「イベント」など緑化と関連する分野のビジネス創出に向けた研究を進める。万博会場など広大な敷地で快適な空間を生み出すために、緑化は重要なキーワードになりうると判断した。

 万博後のIRも視野

 半年間のイベントに過ぎない万博がビジネス上魅力的なのは、万博閉幕後も夢洲でIRの運営が計画されているためだ。三井住友銀行で夢洲開発を支援するプロジェクトチームを率いる林俊武氏は「大半の企業は万博とIRを区分けして考えていない」と指摘する。顧客企業からは「万博で社の商品を世界にアピールし、IRで販売を拡大したい」(食品関連企業)などと、万博とIRをセットで事業拡大につなげようとする声が多くあがっている。

 ただ、万博、IRとも現時点では運営されていないだけに、具体的にどのようなビジネスが可能か不明瞭な点が多い。三井住友銀が2019年10月に博覧会協会と共催した企業向けセミナーでは270人あまりの企業関係者が集まったが、「万博にどのように参加できるかわからず、情報収集に必死になっている」(林氏)のが現状という。

 幅広い参画機会創出を

 PLLでの事業提案の募集も、期間が約2カ月と短いことに、促進会議の会場からは不満の声があがった。協会側は「応募状況をみながら、次のステップを考えている」と釈明したが、基本計画策定に向け、作業が過密化している状況が浮き彫りとなった。

 万博参画に向けて人員を割く余裕が少ない中小企業やベンチャーにとって、事業案提出の期間の短さは不利に働きかねない。IRを含む万博ビジネスへの参画機会をいかに幅広く確保できるかが重要な課題となりそうだ。