グローバルリーダーの育て方

子供の英語教育、お金と時間の最適なかけ方 小学3年生まで粘って

龍芳乃

英語の壁は幼少期に乗り越えるべき理由

 私の夫は、日・英・中のトリリンガル(トライリンガル)です。高校卒業後に経営学を勉強しにアメリカに渡り、大学院を含めて6年間アメリカで過ごしました。英語は、小さい頃から英会話学校に細々と通う程度で、モノにしたのは渡米後でした。

 彼には英語の習得時期について少し後悔があるようです。現地の大学では、周りの学生が学問の専門性を高めることに注力する一方、彼は英語(言語)でつまずき、時間をロスしてしまったからです。彼の経験からいえるのは、将来的に高等教育で専門性を磨くために英会話学校に通い続けることは費用対効果・時間対効果が低いということでもあります。

 グローバルで戦うためには、英語の「壁」はさっさと幼少期の段階で乗り越えて、中高生以降は言語に関係なく自分の興味あることに没頭し、専門性を身に着けたほうが、費用対効果が高いのです。大人になってからバイリンガルを目指すことも不可能ではない…ですが、夫の例が示すとおり、とっても非効率的です。

日本人の英語能力は100カ国中53位

 では日本の英語教育の成果は? というと最近、「相変わらずか」というニュースが飛び込んできました。

 非英語圏の国と地域の英語能力を示すランキングで、日本は100カ国中53位だったのです。この「EF EPI英語能力指数」は受験者数230万人、100カ国の成績をもとにランキングを算出している世界規模の英語力のベンチマークとして有名です。

 11月8日に発表された2019年版では、世界全体の英語能力は上昇傾向にあることが示されました。一方で日本は9年連続の下落。参加国・地域と受験者が拡大したという要因もあるようですが、「低い英語能力」と評価されています。ちなみにトップはオランダ。近隣国の韓国は37位、中国は40位です。うーん、苦しい! 

 この結果を見る限り、日本人の平均的な英語能力は低く、日本の一般的な英語教育はあまり機能していないようにみえます。

子供に英語を習得させる 効率的なお金と時間のかけ方

 ランキング結果からも読み取れますが、日本にいながら英語をマスターするのは、お金も、時間も忍耐力も必要です。そこで、皆様に質問です。

 「英語習得」という時、皆様は下記のうちどのレベルをお子さんに目指してほしいですか?

  • Level1: 英語に親しむ
  • Level2: 英語をしっかり学びたい
  • Level3: 英語を使って別のことを学びたい

 図は、大まかなサービスに対して、どの程度の英語が習得できるかを示したものです。

 私が経営しているGG International School(GGIS)は、もちろんLevel3「英語で学ぶ」なので、英語はさっさと習得して、その先の科目やスキルに注力しています。このレベルでは英語はあくまでインフラです。

 Level2の「英語をしっかり学ぶ」が目的というであれば、アフタースクールなどの英語環境にできる限り長い時間身を置く環境をお勧めします。逆に英語をしっかり学びたいと思っているのに、自宅教材だけでそれを成し遂げようとするのは、とても困難です。

「親しむ」だけなら中途半端に投資しなくて良い

 年齢にもよりますが、Level1「英語に親しむ」ことが目的なのであれば、学校のALT(外国語指導助手)の先生や英語学校が主催しているハロウィンなど単発のイベントに参加するだけで十分です。学校で英語を習い出したときに英語が嫌いにならないためにご自宅で市販の英語教材に親しんでおくのも悪くはありません。

 しかし、慣れる、親しむだけでは、Level2、 Level3へと進むことはかなりの困難を伴います。最終的にLevel3「英語で学ぶ」を目指すのなら、最初からLevel3の環境を与えてあげたほうが、お子さんは苦労しません。

小学3年生まで粘って!

 小さい子供は吸収がとても早いです。しかし、忘れるのはもっと早い。小さい頃から英語を始めるならば、小学3年生まで続けられるよう計画を立てて下さい。

 GGISでは小学3年生を「バイリンガルになるためのロードマップ(道筋)」における重要な通過点と定義しています。3年生という学年は、読み書きができ、自分で言語を維持・管理できる年齢だからです。

 途中で辞めるくらいならば、そのお金・労力・時間は取り置いておき、高校や大学などで短期留学したほうがよっぽどためになると思います。投資を無駄にしないためにも、3年生を一つの目標にして下さい。

バイリンガルを目指すなら3歳までには始めたい

 では、Level3あるいはバイリンガルを目指すとき、英語はいつから始めれば良いでしょうか? 「小さい頃」とは具体的に何歳でしょうか。早ければ早いほど良いですが、ここからは予算との話し合いにもなります。GGISでは遅くとも3歳までに始めることをおすすめしています。

 3歳という年齢は、お話しもできる年齢ですが、まだまだ発達段階のため、英語を「別言語」と明確に区別することなく、敷居の低いまま受け入れてくれるからです。最初は英語と日本語という意識をせずにごちゃまぜで話してしまうと思いますが、年齢と理解力が上がるとともに使い分けられるようになりますのでご安心ください。

親の覚悟と忍耐がカギ やり抜かないと英語嫌いに

 GGISに見学にいらした保護者は、まず子供たちの英語のレベルに驚きます。英会話学校を探す延長で見学に来ると「こんな世界があるのか」と驚かれ、GGISの生徒のエネルギーや英語を学ぶ意欲に感心の声を頂きます。

 もちろん多くの子供が入学時から英語でコミュニケーションできるわけではありません。そんな子供がインターナショナルスクールに入学するとどうなるのでしょうか。

 GGISのアフタースクールには、3歳で通い始めたKちゃんがいます。Kちゃんのママはとても教育熱心で、GGISの英語のレベルに惚れ込んでくださり、入学しました。

 しかしGGISでは日本語を一切使いません。Kちゃんも最初は言葉が通じないストレスで、ワンワン泣きました。3歳は周りのことを理解し始め、日本語も発達し始める時期なので本人もつらかったと思います。大人だって同じ立場になったらつらいですよね。

 Kちゃんは、朝から「GGISには行きたくない」とゴネました。泣いてもいました。これがどれくらい続いたと思いますか? 1カ月です。長いお子様だと数カ月続きます。

 子供は交渉上手。このつらいストレス環境を抜けるための施策として、送り迎えのときには「戦略的に」泣きます。たいていの場合、“戦略的ギャン泣き”なので、ママが見えなくなるとケロッと泣き止んでいることがほとんどです。(全力でアピールするアプローチを、こちらが学びたいくらいです(笑))

 通い始めはママ、パパにとっては、我慢のときです! お子さんにとってもチャレンジのときです。子供が泣いてつらそうだから…と、この時期にやめてしまうのは一番もったいない。ここをグッと我慢して、何事もなかったかのように「また後でね~」と別れ、影で応援してあげると、子供は必ず乗り越えてくれます。それを信じて続けてくださいね。

 Kちゃんのママは、娘が嫌がる姿を見て心がキュンと締め付けられるところをぐっと抑えてくれました。先生も、写真などをつかって現状を伝えました! 諦めないで通い続けてくれたので、今は完全なバイリンガルです。

 話は少しそれますが、入学前に保護者と面談すると「子供を尊重する」というのを大事な価値観としている家庭が多いようです。しかし、「子供の意見」と「子供の気分」または「子供のわがまま」を見分けられないと、「子供帝国」になり、振り回されることになります。親は親の意見、子供は子供の意見があります。そのバランスを取るのが親の役割。振り回されないようにしてくださいね!(私は常に息子に振り回されていますので自戒の意味も込めて…)

 さて今回は、目指す英語レベルによって、子供に利用させるサービスを選んだほうがいいこと、子供が「英語で学べる」ようになるためには親の忍耐が必要であることなどをご説明しました。これらは、子供が将来グローバルリーダーになるための「インフラ」である英語の身に着け方のヒントです。次回は、その次のステップとして、グローバルリーダーになるために必要なメインスキルについてお話させていただきます。

龍芳乃(りゅう・よしの) 株式会社G&G 代表取締役
日・英・中のトライリンガル。大学卒業後、PR会社、外資系コンサルティング会社を経て2013年に起業。世界で通じる「人間力」の基礎を育む「GG International School」を経営。「Art to Science」をベースに0歳から小学校高学年まで学べるプログラムを用意し、人格形成の根幹となる揺るぎない自信を育んでいる。2児の母。

【グローバルリーダーの育て方】は、100%英語環境の保育園やアフタースクールを経営する女性社長・龍芳乃さんが、子供が世界で通じる「人間力」「国際競争力」をどう養っていくべきかを説く連載コラムです。アーカイブはこちら