【グローバルリーダーの育て方】グローバルリーダーの質は幼少期から育む 英語はインフラに過ぎない
「グローバルリーダーの育て方」という連載タイトルから何をイメージしましたか? ご自身のこと? それとも部下、もしくは、お子様の教育でしょうか。ビジネスの場でも、教育の場でもよく耳にする、スローガン的な曖昧なタイトルを選んでしまいましたが、このタイトルには私がお伝えしたいことがぎっしりと詰まっています。
私は現在、東京の品川区・目黒区を中心に0歳児から小学生が通う「GG International School(以下、GGIS)」というインターナショナルスクールを経営しています。GGISが「グローバルなリーダー」をコアバリュー(価値観)としたのは、私自身の経験が大きく影響しています。この連載コラムでは、これからの世代を担う子供たちの教育にフォーカスしますが、ビジネスパーソンのお役に立てるポイントにも触れたいと思います。
まずは、私の生い立ちを少しお話しさせて下さい。
英語はすんなり 中国語は苦戦
私は5人兄弟の長女として、日本人の家庭に生まれました。小学5年生の時、父の急な転勤でアメリカ・ニューヨークに家族7人+祖父で引っ越しました。
無駄に明るい性格と負けず嫌いが功を奏し、現地校に通い始めて2日目には友達を家に招待していたそうです。また、人前に出ることを当然のこととして設計されているアメリカ式の教育を受けたことで、人前に出るのは苦ではなくなりました。帰国後は、アメリカの小学校で鍛えたプレゼンテーション力を生かして多くのスピーチコンテストに出場し、優勝や外務大臣賞を頂きました。
3年間アメリカで生活したおかげで、英語は幸いにも苦もなく習得できましたが、言語習得で苦労した経験もあります。中国語です。「これからの時代、英語だけでは足りない」と大学在学中に中国・北京に留学しましたが、中国語は、アメリカの小学校で英語がペラペラになったように簡単にはいかなかったのです。
机に向かうよりも人との関わりを通して学んだほうが早いだろうと考え直し、寮の管理人さんと友達になって会話したり、「飲みニケーション」を通して中国語にどっぷりと浸かりました。そしてようやく、大学の授業を中国語で受けられるレベルまで上達しました。
3つのステージを経験した社会人時代
大学卒業後、憧れのPR会社で晴れて社会人となりました。二児の母になった今では絶対に履かないピンヒールを履き、外資系のクライアントを相手に、絵に書いたような“キラキラPRビジネスウーマン”として毎日楽しく過ごしていました。
PRとして仕事も要領よくこなせるようになり、鼻もたかーくなりかけたところで、新しいことにチャレンジしようと外資系コンサルティング会社へ転職しました。国内外トップの大学を出た方々に囲まれ、「MECE」とか「KGI」とか「EBITDA」とか「リダンダント」とか…横文字やコンサル用語が飛び交う職場にシドロモドロ。…知ったかぶりも上手になり、こっそりと”ググる”スキルも格段に上がりました。コンサルタントとして、億単位のディールのセールス、立ち上げ、PMO(プロジェクトマネージメントオーガニゼーション)を担う部署で働いた経験が、いま会社を経営する際にとても役立っています。
コンサルティング会社を退職後は、フリーランスで仕事を受けて起業資金を貯め、2013年に現在の会社を設立しました。社会人として3つのステージ(PR会社、コンサル、フリーランス)を経験したことで、現在の学校の理念やコアバリュー(価値観)を作り上げることができました。
そもそも「グローバル」とは? 「リーダー」って?
話を戻しますが、そもそもグローバルリーダーとはどのような人物像でしょうか? 私が経営するGGISが定義する「グローバル」、「リーダー」を引用します。
【グローバル】
目まぐるしく変わる世の中で、変化や違いを楽しみ、多様性を享受できるマインドセットを持つ人。世界で通じる「人間力」が備わっている人。
【リーダー】
従来の階層型(Hierarchy)の組織中でトップダウンで周りに指示を出すようなリーダー像ではなく、コミュニティ(Heterarchy)の中で求心力がある、人と人を繋げられる人。
これがなんと小学校入学前の小さな子供も通うインターナショナルスクールの重要な価値観なのです。GGISにお子様を通わせる親御さんから「うちの会社の社是よりすごい」とビックリされたこともあります。
子供のうちからこんな人物像を目指すなんて「大げさ」と思われるかもしれませんが、グローバルなリーダーになるためには、どうしても習得しておくべきスキルがあります。それは英語です。【グローバル】の定義にある「多様性を享受する」ためにも、【リーダー】の定義にある「コミュニティの中で中心となり人と人を繋げる」ためにも、やはり今の世界的な舞台では、英語が大前提になります。
翻訳機やGoogle翻訳など、翻訳サービスが精密さを増していますが、通訳を通して届けるのと、自分の言葉が生のまま直で相手に届くのでは、伝わり方に違いが出ます。最新の論文や海外のニュース記事、ブログ、テレビ…英語を習得すればアクセスできるコンテンツは大幅に広がります。これからの時代、英語は絶対必須のツールとして習得しなければなりません。
グローバルリーダーになるための2つのテーマ
さらに、英語の習得を前提として、グローバルリーダーになるための2つの重要なテーマがあります。
(1)インフラとしての英語教育
グローバルリーダーのインフラである英語習得に関してお子様のためにできること、国が取り組むべき英語教育改革、私ができる草の根活動
(2)STEAM人材
グローバルに活躍するために必要な素質「STEAM」人材
「STEAM(スティーム)」は、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)にArts(教養教育)を加えた5つの領域を横断的に学習する教育方針です。Artsが入っているのが重要なポイントです。Uber(ウーバー)やAirbnb(エアビーアンドビー)など、アメリカ・シリコンバレーのスタートアップ企業が爆発的発展を遂げたのは、創業者自身がSTEAM人材だったからと言われています。
GGISもSTEAM教育、「Art to Science×体験型学習」をカリキュラムや行事が組みこんで、グローバルリーダーを幼少期から育てています。この連載では次回以降、どんなやり方でどんなふうにやっているのか、これから順を追ってお話させていただきますので、よろしくお付き合いください。
【プロフィール】龍芳乃(りゅう・よしの)
日・英・中のトライリンガル。大学卒業後、PR会社、外資系コンサルティング会社を経て2013年に起業。世界で通じる「人間力」の基礎を育む「GG International School」を経営。「Art to Science」をベースに0歳から小学校高学年まで学べるプログラムを用意し、人格形成の根幹となる揺るぎない自信を育んでいる。2児の母。
【グローバルリーダーの育て方】は、100%英語環境の保育園やアフタースクールを経営する女性社長・龍芳乃さんが、子供が世界で通じる「人間力」「国際競争力」をどう養っていくべきかを説く連載コラムです。アーカイブはこちら。
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