6月と7月はボーナス(賞与)を支給する会社が多い時期です。毎月貯蓄ができている人はボーナスの50%~100%を預金や投資に回し、将来に備えるのがおすすめです。そこで今回は、ボーナスを賢く運用するために知っておきたい金融商品4点とそのリスクについてご説明したいと思います。
商品比較を行う前に WEB検索の注意点
ボーナス支給時期になると、どこの銀行の金利が高いのか、どんな商品に投資すればよいのか…などを検索する人も増えるでしょう。しかし、GoogleやYahooなどの検索エンジンによるWEB検索を活用する場合には注意が必要です。ポイントは、(1)執筆者、(2)スポンサー、(3)サイトの運営者情報です。
筆者も色々な企業から執筆を依頼されますが、金融系の記事を作成する場合は、依頼者の意向を反映する必要があります。その依頼理由の多くは、金融商品の販売につなげたい、サイトへのアクセスを増やしたいという性質のものです。
執筆者が独立系のファイナンシャルプランナーであっても、依頼者であるスポンサーの意向には沿わなければなりませんので、記事の内容は中立的とはいえません。また、WEB検索をすると上位に表示される記事の多くは、「アフィリエイト」といって、記事を読んだ人が資料請求したり、購入するとサイトに報酬が支払われる仕組みのため、こちらも情報の中立性はないといえるでしょう。なお、この連載は自由に書かせていただいていますので、ご安心ください。
このような状況において、客観的な情報にたどり着くことは難しいでしょう。みなさんには、情報が編集されているサイトよりも、金融商品の販売会社のホームページ(HP)を確認されることをおすすめします。銀行、証券会社、保険会社は金融商品の販売会社として必要な情報を網羅してHPに掲載しています。商品比較を行う場合に重要な点は、正しい情報を用いて比べることです。
リスクのない金融商品はない
興味のある商品は、販売会社の公式ページをご覧いただくことを前提として、金融商品ごとの特徴やリスクを解説します。リスクを比較すれば、消去法で預ける金融商品の目途が立つでしょう。
例えば、銀行預金にリスクはないと考える人が多いのですが、金融商品には様々な注意点があります。注意点は当たり前すぎて説明されないものもありますし、個々人の社会情勢に対する捉え方次第でリスクになりえることもあります。また、金融商品には、リスクのない商品はありません。たとえ預貯金であっても、リスクを理解しておくことが大切です。
それでは、一般的な金融商品からリスクについて考えていきます。
1. 銀行預金と郵便貯金 唯一の元本保証型
お金の預け先としてダントツの認知度を誇る預金と貯金。「預金」は銀行の商品で、「貯金」はゆうちょ銀行の商品というくらいの認識で良いでしょう。金融商品の中で唯一、元本確保型の商品です。「元本確保型」の意味は、どのタイミングで解約しても損失がないということです。他の金融商品は、一定期間後に元本確保ができる商品や、通貨建てで元本保証をする商品もありますが、元本保証と断言できる安心感のある商品です。
日本に住む人の多くが、金融資産を預金と貯金で運用していますが、リスクは3つあります。
1つ目は金融機関の破綻リスク。破綻しても、「ペイオフ」という制度により元本1000万円と利息が保証されますが、高額預金者にとっては心もとない保証でしょう。一度金融機関が破綻すると資金の引き出しまでに短くとも数カ月かかります。長い場合は年単位になりますので、銀行を分散するということは真剣に考えましょう。
2つ目は物価上昇リスクです。デフレといわれて久しい日本ですが、日常生活で購入する物品は値上げあるいは実質値上げされています。原材料の値上げにより、ティッシュペーパーの枚数が減ったり、ツナ缶の容量が減ったり、牛乳パックの容量が小さくなっており、従来と同額ながら従来よりも少ない量しか買えなくなってきています。物価が実質10%上昇しても、預金利息は0.001%のままです。預貯金として100万円が口座に預けてあっても、1年後に110万円になることはありません。5年後にモノの値段が2倍になっても、口座の残高は100万円のまま。気が付けば、5年前の50万円に相当する価値になっているという可能性があります。
3つ目は、物価上昇に似ているのですが、円の価値が下落することです。日本という国や日本の経済力に対する信任、円を保有することに対する評価が下がった時、円の価値は下がります。すると物を買うときに札束を用意することになります。テレビで見たことがあるかもしれません。リヤカーで札束を運ぶ世界です。通貨が暴落し続けると、安定した米ドルなどが国内で流通することもあります。
《銀行預金と郵便貯金のリスク》
・金融機関の破綻
・物価上昇
・通貨としての円の価値下落
2. 外貨預金 インフレでも資産価値を守れる
「預金」という名称は安心感かつ、以前は高金利であったことから、10年前に賑わった商品です。
リスクのひとつは、円での預貯金と同様、金融機関の破綻リスクです。「外貨預金」はペイオフの対象外であり、金融機関が破綻しても一定額の保証はありません。預金というイメージから保証があると誤解している人も多いのですが、円の預金と異なり安全性は低いと言えます。
もうひとつは為替変動リスクです。外貨預金は、外貨で運用します。米国ドル、オーストラリアドルなどで外国の通貨でお金を預けます。金利を見てみると、かつてのような高金利ではなく、円預金と見間違うほどの低金利になっています。金利が高ければ、為替の変動を金利で補ってくれますが、今は金利ではなく為替変動で儲けを狙う商品に様変わりしています。為替手数料も発生しますので、為替変動だけで儲けを得ようと考える人は、コストも含めて「投資」を検討するとよいでしょう。
円建て預貯金のデメリットである物価上昇あるいはインフレに関しては、円の価値が下がり円安になった場合には、外貨で資産を保有することで、通貨価値の下落から財産を守ることができます。インフレに対する効果は、これから説明する「投資信託」においても、外貨建ての場合は同様の効果が期待できます。
《外貨預金のリスク》
・金融機関の破綻(ペイオフの対象外)
・為替変動
3. 投資信託(債券) 外貨建て商品が増加中
投資信託には「主に債券に投資する商品」と、「主に株式に投資する商品」があります。かつては、公社債投信という商品が人気で、安定した利回りかつ元本割れリスクの少ない商品として投資をしている人が多い商品でした。
現在では、より高いリターンを求めて、外国通貨建ての金利の高い債券に投資する商品が増えています。債券に投資する投資信託の価値は、金利の動きで決まります。直感的にわかりづらいのですが、金利が下がると価格が上がり、金利が上がると価格が下がります。
現状の金利が史上最低水準であることを考えると、価格の値上がりは限定的であるという見方ができます。代わりに、一定期間ごとに債券の金利を受け取ることができるため、金利受け取り分だけ継続的に価格が上がると見ることもできます。
ただし、人気商品として販売されているであろう「外貨建て債券」に投資する投資信託の場合、為替変動のリスクが伴います。さらに、投資先として不安定であるとみなされるような信用力の低い格付け債券に投資する商品も、高利回りから人気であるため要注意です。
外貨建て債券に関しては、新興国を含めて多様な通貨で投資する商品があります。新興国通貨の場合、通貨の暴落によって、投資信託の価格が大幅下落することは比較的よくあります。当初、数年は好調であったものが、景気の悪化とともに値下がり続ける商品が多い印象です。
投資する際は、運用期間をあらかじめ決めておき、一定期間後に解約するなど自分なりのルールが必要です。
《投資信託(外貨建て債券)のリスク》
・為替変動
・通貨暴落
4. 投資信託(株式) 面白みのない商品選びが好成績に
貯蓄から投資への流れで一般的になってきた商品が、「株式投資」信託です。大きく分けて、国内株式に投資する商品と、海外株式に投資する商品があります。海外株式に投資すると、為替リスクが発生します。
株式投資に共通するリスクは、投資先株式の価格変動です。目論見書などを熟読しても、投資すべきかどうかの判断は難しいと思いますので、過去の運用成績を確認し、他の商品と比較されることを推奨いたします。理由としては、過去の成績が良好な株式は、例外はありますが、今後の運用結果に期待がもてるからです。過去の成績が悪い株式は、今後も良くなることはないでしょう。学校の成績と同様で、成績の悪い学生の点数がいきなり上がることはないのです。成績の良い学生でも点数が下がることはあるでしょう。それでも、過去の投資手法の延長で、価格が戻る可能性もあると考えます。
気を付けていただきたいのは、証券会社や銀行が販売しやすい「テーマ型(例えばAI、環境など)」や「特定の国(オリンピックに沸いたブラジルなど)に投資する投資信託」は避けるのが無難です。理由は、手数料が高いことと、ブームが去ると価格が下がるなど、長期投資に向かない商品だからです。
投資の王道である銘柄分散を主眼に置いた、外国株式のインデックスタイプや長い歴史のある外国株式のアクティブファンドを選択するのも一案です。
《投資信託(株式)のリスク》
・株式の価格変動
・通貨暴落
いかがでしょうか。一般的な金融商品4つを比較しました。預貯金で物足りないと感じる人は、外貨預金、投資信託(債券型)、投資信託(株式型)なども検討されると良いでしょう。
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