【元受付嬢CEOの視線】年末年始の挨拶、実は迷惑? 「悪しき習慣」に元受付嬢が経営者目線で新提案

 
※画像はイメージです(Getty Images)

 【元受付嬢CEOの視線】 クリスマス会、忘年会、納会…年末はただでさえ忙しいのに、さらに「年末年始のご挨拶」が入ってくる。これ、ビジネスシーンのあるあるですよね。

 実は受付嬢だった頃、私も12月は憂鬱でした。世間は「クリスマス」「お正月」…と浮かれムードなのに。

 というのも、年末年始はアポなしの来客が異常に増えるのです。いわゆる受付嬢にとっての繁忙期ってやつです。

「年末年始のご挨拶って必要ですか?」

 でもそれは受付嬢だけじゃなかったようです。この前、会食でこんなやり取りがありました。

 相手 「ぶっちゃけた話で恐縮なのですが、年末年始のご挨拶って必要ですか?」
 私  「必要ないです!」(即答)

 その時に受付嬢時代の思い出が蘇りました。

「居留守を使ってくれ」

 月末月初というのは通常時でも来客が増えて忙しいのに、年末年始はその「ご挨拶」というやつで、一人のお客様がグループを横断して取次を求めてくるのです。しかも一人ではありません。1日に何人もそういったお客様がいらっしゃるのです。

 基本的にアポがないので、内線電話をかけても担当者はおらず、代理の方も慣れた様子で「カレンダーとかあるなら預かっておいてください」と言います。相当忙しかったのか、「居留守を使ってくれ」と依頼されることもありました(笑)

 カレンダーは結果的に私たちが受付で預かります。新年の挨拶の時は「謹賀新年ご挨拶」のいう謎の印鑑を押した名刺とともに(笑)

 そういったお客様があとを絶たず、受付カウンターがカレンダーでいっぱいになります。たいていの社員が取りに来ないので、催促の電話をかけるという手間が増えるわけです。

 そして取りに来た社員の人たちは口を揃えてこう言います。

 「カレンダー使わないんだよな…。てゆーか、わざわざ来なくていいのに…」

 私たち受付嬢も心の中で同意し頷く。そんなやり取りを何回繰り返して来たことか。

「不在」を願っている?

 ビジネスシーンに古くからある「ご挨拶」という習慣。今回はその裏側と私からの提案をお話ししたいと思います。

 いわゆる「ご挨拶」が奪っているもの。一番は「時間」です。

 訪ねられる側と訪ねる側に共通するお話ですが、ビジネスにおいて、時間というリソースは有限であり非常に貴重です。そんな貴重な時間を割く理由には「売り上げを作る」「組織を大きくする」、または「社員とのコミュニケーション」などが挙げられます。時間と得られるものを天秤にかけた上で、必要と判断すれば、自分の時間をそれぞれに当てると思います。

 しかし本当のところ、「ご挨拶」に時間を割く意味を見つけられていないのではないでしょうか。だからこそ、年末年始にカレンダーをもらうことに意義を感じられないのだと思います。

 そして、受付嬢だった時、挨拶に来ている大半の人から感じ取られたのは「とりあえず足跡を残したい」感。

 会社から「行って来い」と言われたから来ている。取り次いでもらったけど、担当者が不在であることを願っている…という雰囲気がすごく伝わってきました。

 彼らの「ご挨拶」に費やしている時間も本当にもったいないと思いました。新規の営業先の開拓に時間を使ったり、普段話すことができていない社員とのコミュニケーションなどに使った方が有意義かもしれません。

捨てられるカレンダー

 そして訪問者が持ってくるカレンダーや手帳。あとは手ぬぐいもありますね。

 企業名や企業ロゴが大きく書かれたカレンダーなどを社内で使うことは現実的ではなく、それらのほとんどが捨てられているのです。

 スマホやPCでカレンダーが見られる時代です。お金を出しても欲しいと思うくらいのカレンダーじゃないと、壁掛けやデスク置きカレンダーは使わないという人も多いのではないでしょうか。

元受付嬢CEOとして見直しを提案!

 そこで私からの提案です(笑)

 カレンダーなどの製作費は寄付してください! もしくは社員に還元してください!!

 挨拶に来られる人も迷惑。受付で取次をする人や代理対応で電話に出る人も迷惑。

 実際に「ご挨拶」に出向いている人も実は疑問を感じながら訪問している始末。

 年末年始のご挨拶をしたから成約したことありますか? 逆に挨拶に行かなかったからといって、失注したことありますか??

 こうして考えてみると、年末年始の挨拶はどの立場にとってもいいことなしです。

 「うちは年末年始のご挨拶がわりのカレンダー作成はいたしません。その分は寄付しています」、または「忘年会の景品に回します! 社員に還元します!」と言ってもらった方がよっぽど印象にも残りますし、社会的意義のある会社だなとか、社員を大切にしている会社なんだなと感じます。

 結果的に、そういった企業様とお取引したいと感じる人も多くなると思います。

 日本にはとても素敵な風習や文化があると思います。しかし、ビジネスシーンにおいて「悪しき習慣」がまだまだ多く根付いているのも確かです。

 こうした形骸化した習慣に対して意識を変えてみることで、お客様からの印象や社員のモチベーションも変わってくるのではないでしょうか。勇気を出して、上司に提案してみてください!!

 まずは身近な習慣を変えることで、社会を変える一歩に繋がると私は思っています。

【プロフィール】橋本真里子(はしもと・まりこ)

ディライテッド株式会社代表取締役CEO
1981年11月生まれ。三重県鈴鹿市出身。武蔵野女子大学(現・武蔵野大学)英語英米文学科卒業。2005年より、トランスコスモスにて受付のキャリアをスタート。その後USEN、ミクシィやGMOインターネットなど、上場企業5社の受付に従事。受付嬢として11年、のべ120万人以上の接客を担当。11年という企業受付の現場の経験を生かし、もっと幅広い受付の効率化を目指し、16年1月にディライテッドを設立。17年1月に、クラウド型受付システム「RECEPTIONIST」をリリース。

【元受付嬢CEOの視線】は受付嬢から起業家に転身した橋本真里子さんが“受付と企業の裏側”を紹介する連載コラムです。更新は原則、隔週木曜日です。

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