仕事はあるのに人がいない、航空業界で人手不足 パイロットの「2030年問題」も
訪日外国人客の増加などで航空需要が拡大する中、空港で働くさまざまな職種で人手不足が深刻化している。関西国際空港では、航空会社をはじめ機内食製造や清掃などの運航サポート会社、飲食店、免税店などで1万7千人以上が勤務しているが、こういった地上業種で必要な人員が確保できないという声があがっており、今後も業務拡大に追いつかない状況が続けば、訪日客の誘致などに影響が及んできそうだ。
航空機の誘導や手荷物積み下ろしなどを請け負うKグランドサービス(大阪府泉佐野市)では、関空の路線数増加や海外航空会社の参入が相次いでいることを受け、採用計画を約3年前から拡大。平成29年度は30人を募集したが、応募者が少なく充足できなかった。
同社は主に航空系専門学校の卒業生を採用してきたが、近年は大学生のほか、昨年度からは高校生の新卒採用も始めた。ただ、就職活動では学生優位の売り手市場が続き、華やかな空の仕事に比べて地上勤務は地味なイメージを持たれていることもあり、人材は足らず、人事担当者は「仕事の委託を断らざるを得なかったこともある」と話す。
航空業界へ多く人材を輩出する大阪航空専門学校(堺市西区)の担当者も「就職率はほぼ100%で、求人があっても紹介しきれない状況」と説明。一方で少子化などの影響で学生数はほぼ横ばいという。
関空の国際線旅客定期便の就航便数は、30年夏ダイヤの計画(3月現在)が過去最高の週1219便で、25年の約1.75倍に拡大。これに伴い、関空で働く従業員も増加。運営会社の関西エアポートが今年1月、関空島内に事務所や店舗を置く355事業者を対象に実施した調査では1万7363人にのぼり、26年度の前回調査から18.1%増えた。業種別では、航空機の誘導や機内食の手配など航空機サービス業が32.3%増だった。
関西エアでは、空港関連の求人情報を提供するウェブサイトを開設するなど、地上業務の広報活動に力を入れるが、抜本的な解決策にはなっていない。
航空業界では、バブル期に大量採用されたパイロットが定年を迎える「2030年問題」も抱える。政府は、訪日外国人を、平成29年の2869万人から、東京五輪・パラリンピックが行われる32年には4千万人に増やす方針だが、業界の人手不足が足かせになりかねず、対策が急がれる。
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