海賊版サイトは「漫画の万引」 単行本売り上げ、落ち込み過去最大

 
単行本・雑誌の推定販売金額

 出版市場を長年支える紙の漫画単行本の売り上げが急減している。昨年の推定販売金額は13%減で、過去最大の落ち込みを記録した。原因について、出版関係者は人気漫画を無許可で公開している「海賊版サイト」の横行を指摘。日本漫画家協会もこれらのサイトを非難する異例の声明を発表した。

 「全く創作の努力に加わっていない海賊版サイトなどが、利益をむさぼっている」「このままの状態が続けば、日本のいろいろな文化が体力を削られてしまい、ついには滅びてしまう」

 日本漫画家協会(ちばてつや理事長)は13日、公式サイトで「海賊版サイトについての見解」とする声明を公開。昨秋から急激に知られるようになった、ある特定のサイトに言及しているとみられる。調査会社「ビデオリサーチインタラクティブ」によると、今年1月にアクセスした人は推定約30万人に上るという。

 この状況に、作り手側は強い危機感を抱いている。

 「海賊版サイトの使用は万引と同じだ」。複数の編集者はこう憤る。推定被害額は月に数億円単位に及ぶ出版社もあり、各社は削除要請に取り組んでいるが、なしのつぶてだ。

 同協会理事の漫画家、赤松健さんは「漫画は企画段階から数年単位で制作している。特に新人や若手にとって、海賊版サイトによる金銭的、精神的な被害は深刻だ」と指摘。「漫画家にとって、漫画はわが子のような存在。これらのサイトは絶対に使わないでほしい」と呼びかける。

 近年の主流は「リーチサイト」と呼ばれるサイトで、著作権者の許可を得ることなく海賊版がアップされたサイトにリンクを張り、利用者を誘導する仕組みだ。海外のサービスが多く、運営者の特定が難しいのに加え、リーチサイト内で直接読めるわけではないため、摘発は難しい場合が多い。著作権法に詳しい福井健策弁護士は「従来の説ではリンクそのものは違法ではない」と話す。

 たとえ一つの海賊版サイトを潰しても、データはネット上に残るため、またすぐ別のサイトが現れるイタチごっこが続く。福井さんは「デザインなどが良く、一見して海賊版とは思えないサイトも多い。ユーザーも犯罪に加担している認識は薄いのではないか」と指摘。「海賊版をめぐる状況は年々悪化しており、法規制を含めた議論が必要だ」と語る。

■紙はピークの半分

 出版業界は苦戦が続いている。出版科学研究所の調査によると、昨年(平成29年)の出版業界の推定販売金額(紙)は前年比6・9%減の1兆3701億円。ピークだった平成8年(2兆6564億円)の52%にまで縮小した。電子書籍市場は年々伸びているものの、それでも昨年は2215億円と、紙の落ち込みを補いきれない状況が続く。

 漫画単行本の場合は27年から落ち込みが始まり、29年は約1700億円で前年(1947億円)の13%減と、過去最大の落ち幅を記録。同研究所は、海賊版サイトの存在や人気漫画の完結などを理由に挙げる。(本間英士)