スタバ「マイボトル」の人、倹約どころか浪費家だった 「滅びの道を歩んでいる」と指摘も

提供:PRESIDENT Online
割引を得られるマイボトル(タンブラー)はプラスティック製やステンレス製などがあり、デザインも豊富だ(写真はイメージです)

 コーヒー専門店に「マイボトル」を携行する人がいる。数十円の割引が受けられるため、節約意識の高い人のように思えるが、FPの山崎俊輔氏は「マイボトルにこだわる人は浪費家の可能性が高いかもしれない」という。その理由とは--。

 スタバやタリーズで「マイボトル」 節約になっているか?

 「あなたとお金の生存戦略」というサブテーマを掲げて、お金との付き合い方を考えている本コラム。今回は、最近持ち歩く人が目立つ「マイボトル」と節約との関連を考察してみます。

 より少ない支出で同等の満足を得ることができれば、その差額は手元に資産として蓄積されることになり、家計にとっては大きなアドバンテージになります。これが節約の意義です。

 このお金の鉄則に照らしたとき、はたして「マイボトル」は節約につながるでしょうか。

 スターバックスやタリーズなどコーヒーショップのレジ前に並んでいると、列の前の人がやおらマイボトルを出し、コーヒーやラテを注いでもらっている光景に出くわします。

 シアトル系のコーヒーチェーン店は基本的にマイボトルに対応していて、20円(スタバ、エクセルシオール・カフェなど)ないし30円(タリーズ)を割り引いてくれます。国内チェーンの上島珈琲の場合、店舗数は少ないのですが、50円引きとかなりのお得なので職場の最寄りにあればオススメです。

 マイボトルの基本的理念は、エコです。紙のコップやプラスチックのコップを不要とすることで省資源に協力し、店舗のコストも削減している分を顧客に還元している、ということになります。とてもよい取り組みです。

 ▼「マイボトルバカ」と命名させていただきました

 しかし、この割引は、客の「節約」に本当に貢献できているか考えていくと、ちょっと首をかしげたくなる事実が浮かび上がってきます。

 仮に320円する一杯のコーヒーが、30円引かれるということは、およそ10%の割引に相当します。毎日一杯はカフェに寄って飲むという人なら、毎月2~3杯分(約900円)の節約にもなることになります。年間にすれば、割引額の累計は1万円以上になりますからインパクトは小さいとは言えません。

 ただし、マイボトルを持ち歩くタイプの人は、どこか「お金の生存戦略」的に誤っていると思われる行動をしばしばしています。実は、節約するどころか、単なるムダづかいになってしまっている人が少なくないのです。そこで今回、私はそうした人々を下記の理由により、失礼ながら「マイボトルバカ」と命名させていただきます。

 タイガーや象印なら1500円なのにスタバは3000円台

 ■マイボトルバカの浪費1:高いマイボトルを店頭で買う

 「マイボトルバカ」に関してもっとも残念に思うのは、マイボトルの買い方です。多くの人はレジ脇などに陳列されたマイボトルを手に取り、「マイファーストマイボトル」の購入に至ります。さきほど言ったように、マイボトルの持ち歩きは“善行”です。しかし、店頭のボトルはほとんどの場合、洗練されたデザインはいいのですが、「超割高で低機能」なのです。ここが残念なポイントなのです。

 マイボトルは「容量」「断熱性能(素材)」「漏れにくさ」「重さ・大きさ」および「値段」で選ぶべきですが、カフェの店頭にある商品はそもそもの割高設定になっています。1000円台のものもありますが、3000円以上するものがゴロゴロしています。家電量販店にいけば同等以上の機能のマイボトルが半値で手に入ります(ちなみに安値のものは、横に倒すと漏れる程度の密閉性なので、職場の机上でしか使えません。またプラスチック製のものは長持ちしません)。

 あまり知られていないのですが、マイボトルというのはメーカーを問いません。スタバのマイボトルをタリーズに持ち込んでも割引になりますし、象印のマイボトルを持ち込んでも同様です。

 ▼Starbucksのロゴ入りボトルに執着する人々

 家電量販店に行ってタイガーや象印で、スリム軽量デザインのマイボトルを探してください。1500~2000円で納得のいくモノが手に入るでしょう(サーモスは、機能はいいのですがやや高額です)。密閉性がしっかりしていれば、飲み残したコーヒーを半日持ち歩くこともできます。しかしながら、スタバやタリーズで「他社」製のボトルを見かけることはそれほどありません。

 マイボトルの予算が1500円か3000円かで「モトを取る回数」は2倍違うことになります。1回の割引30円×50回か、同30円×100回か。他社製をあまり見かけないところとすれば、「モトを取る」差を多くの人が意識していないと言えます。つまり、節約の意思が薄い。

 大した額ではないじゃないか。そういう意見もあるでしょう。しかし、こうした消費行動の人は支出をチェックすると、財布のひもが緩かったり、浪費が多かったりして、お金を貯めにくい傾向にあります。

 コンビニの2~3倍も高いコーヒーを平気で残す神経

 ■マイボトルバカの浪費2:トールサイズを買って飲み残す人

 次に指摘したいのは、一杯のコーヒーやカフェラテから得られる満足度に関してです。スタバやタリーズの常連となっている人々の多くは、昼食後あるいは午後3時頃、「いつもの一杯」を買い求めにカフェにやってきます。出勤前に買う人、退職後に買う人もいます。

 しかし、「いつもの」という消費は「惰性」の消費と背中合わせとなっている恐れがあります。つまり、どうしても飲みたかった一杯ではないこともある。よって、満足度がそれほど高いとは言えない一杯に300円以上を毎日払うことも珍しくないのです。ひどいケースになると、いつも半分以上飲み残しているにもかかわらず、なぜかトールサイズで(ショートサイズではなく!)毎日買う人もいます。

 320円のコーヒーを月22日買えば、月7040円もコーヒーに費やしているわけですが(1日2杯の日があれば、月1万円は軽く超える)、はたしてかけたコストに見合う満足を得ているでしょうか。

 ▼マイボトルの人は「生存戦略的に滅びの道を歩んでいる」

 一杯数百円のコーヒーを含め、日々の買い物において、自分の「満足」を買う意識がない人は、ちょっと厳しい言い方をすれば「生存戦略的に滅びの道を歩んでいる」も同然です。もし惰性で買うなら、缶コーヒー120円でもいいはずです。それだけで月5000円も浮きます。

 セブン-イレブンを代表としたコンビニのコーヒーは試したことがあるでしょうか。ほぼ半分に下がるコスト(レギュラーで100円、ラージで150円)で、満足度が大して変わらないなら、朝の一杯を置き換えてみるだけで家計のコスパは大幅に改善します。日替わりでローテーションしてみるのもいいでしょう。週数回のスタバの一杯の感覚的価値はぐっと高まるはずです。

 かつて『アリー my LOVE』というアメリカの人気ドラマがありましたが、そのなかのせりふで「スタバの一杯をすぐ飲んじゃダメ。香り(アロマ)を味わうところから楽しむのよ」といった内容のものがありました。あれは「一杯の価値」ときちんと向き合っている飲み方といえます。

 高額のマイボトルを店頭で購入するだけでなく、惰性でコンビニの2倍以上も高いコーヒーを毎日飲む習慣がある人を浪費家と言わずして、何と言えばいいでしょうか。

 「マイボトルはアリ」だが「マイボトルバカはNG」である

 ■マイボトルを節約の道に変えよう

 もちろん、私もわかっています。スタバやタリーズの店内は雰囲気がいいのです。私もタイガーのマイボトルを手に、スタバやタリーズでよく仕事をしています(いわゆるノマドワーカーです)。自宅事務所で書くよりスタバのほうが原稿ははかどります。

 決してドヤ顔でパソコンを開いて悦に入るわけではなく、「その一杯で20倍くらいの原稿料を稼げごう」ということにいつもこだわっています。ビックカメラで買ったマイボトルも3年は使いこんでいます。

 しかし、「マイボトルでシアトル系コーヒーを頼む自分、エコでオシャレ」的な感覚でお金を使っている人は、そもそも節約志向があるわけではないでしょう。

 エコ意識はもちろん大事です。マイボトル携行を否定するわけでもありませんし、環境や人権に配慮した「エシカル消費」もあっていいでしょう。

 しかし一方で、このエコな習慣は、少額とはいえ事前のボトル購入という“投資”を必要とする行為。安易に始めることはもちろん、特に飲みたくもないものを日常的にダラダラ飲み続けるような習慣は回避すべきです。そうした行為は、少し大げさに言えば、十分な貯金をできてはじめて成立するものではないでしょうか。

 節約の道を抜きにしたエコは要注意です。どんな高額出費も、どんな割安出費も、節約と満足のバランスを意識しない人はムダづかいをする人です。

 生存戦略的には「マイボトルはアリ」ですが、「マイボトルバカはNG」なのです。

 (企業年金コンサルタント/ファイナンシャル・プランナー 山崎 俊輔)