リスクにならない「終わらせ方」は? 不倫トラブルを回避するための7カ条

提供:PRESIDENT Online
『不倫の教科書 既婚男女の危機管理術』長谷川裕雅(著)イースト・プレス刊

 危機管理は「関係者全員」のために必要

 哲学者ニーチェは「男が本当に好きなものは2つ。危険と遊びである。男が女を愛するのは、それがもっとも危険な遊びであるからだ」という名言を残しています。現在、不倫に対する世間の風当たりは非常に厳しいものがあります。週刊誌報道によって、著名人が活動自粛や失職に追い込まれる姿をたびたびみています。それでも「危険な遊び」に足を踏み入れる人が後を絶たないのは、不倫が禁断の果実であるからにほかなりません。

 不倫のリスクは、著名人だけのものではありません。一般人にも大きなリスクがあります。別居・離婚トラブル、経済的損失、社会的信用の崩壊。最悪、事件に発展するケースもあります。甘い果実は、後で毒が効いてくるのです。不倫は最初から「別れという必然」を前提にした恋愛です。そして不倫の別れ際にはトラブルがつきものなのです。弁護士として、トラブルを未然に防ぎ、身を滅ぼさないための「危機管理術」について、著書『不倫の教科書』(イースト・プレス)にまとめました。

 どうすれば穏便に事を収められるのか。どうすれば最悪の事態を回避できるのか。もちろん不倫を推奨するものではありません。しかし現実として不倫が進行中の場合、「危機管理術」を知ることは、関係者全員のために必要です。今回は著書のなかから、不倫トラブルを回避するための7カ条をご紹介します。不倫をトラブルに発展させない「危機管理」や「戦略」を知っているかどうかで、不倫の結末は大きく左右されることでしょう。

 ▼第1条「記録は残さない」

 メールやSNSは記録として確実に残ります。配偶者に内容を見られてしまえば、一発でアウトです。原則としてメールやメッセージなどで不倫をにおわせるやりとりをしないことをおすすめします。やりとりをしている場合は、せめてこまめに内容を削除する必要があります。またスマートフォンやSNSアプリにロックをかけることも不可欠でしょう。これは「不倫がバレるリスク」とは別に、「不倫相手に悪用されるリスク」も想定してのことです。恋愛は一旦こじれると「愛」が「憎」に変わることがあります。場合によっては相手がストーカーや犯罪者になってしまうこともあります。不倫が暴露される可能性も否定できません。

 さらに怖いのは画像です。文字なら「偽造された」との言い訳が通用することもあるかもしれませんが、画像はそうはいきません。どんなに蜜月な時期でも写真を撮らない、送らない、残さないのは鉄則です。

 ▼第2条「生活スタイルを変えない」

 不倫がバレるのは、配偶者の何気ない変化です。わかりやすい例は、スマートフォンをチェックする頻度が増えた場合でしょう。夜間や休日にスマートフォンを見る機会が増えれば、確実に疑われます。W不倫なら、「土日は連絡を取り合わない」というルールが成り立つかもしれませんが、不倫相手が未婚の場合、そうはいきません。家庭があると分かっていても「もっとまめに連絡してほしい」あるいは「土日にメールして困らせたい」といった心理が働くものです。休日のメールなどは無視を決め込む覚悟が必要です。

 嗜好が急に変わるのも疑われる原因となります。不倫相手との話題づくりのために、以前は見なかったテレビ番組をチェックする、服装の趣味が変わるなど、疑いをかけられかねない行動です。そして日常会話にも注意が必要です。配偶者とは足を運ばない場所に行ったことなどうっかり家庭でもらしてしまえば、「怪しい」と悟られてしまうでしょう。

 ▼第3条「配偶者を大切にする」

 もし不倫関係を続けたいなら、配偶者を大切にすることがとても重要です。そもそも不倫をしている段階で既に配偶者を裏切っているのですが、配偶者を幸せにできない人は不倫する資格もありません。配偶者を大切にしていれば、「不倫を疑われる」リスクを減じられます。もし不倫を続けたいのであれば、まず日頃から配偶者を大切にして、余計な疑いをかけられないようにしておくことが必要です。夫婦間に信頼関係があれば、スマートフォンや行動をチェックされることもないはずです。

 仮に不倫がバレても、離婚する気がないのなら、最配偶者が一番大切だと、誠意をもって説明すべきでしょう。「自分の存在は何だったんだ」とショックに感じたとしても、「でも、私は本当に大切にされている」という思いがあれば、許してもらえる余地もあるかもしれません。配偶者のプライドを傷つけないよう、最善の努力は必須です。

 ▼第4条「恋人(不倫相手)も大切に」

 同時に不倫相手も大切にする必要があります。相手が未婚の場合、「家族のことばかり優先して」といった不満がたまることが多いようです。そうした不満を告げられるうちに、既婚者側が嫌になり、別れを切り出し、未婚者側が逆上するパターンも少なくありません。こうした事にならないためにも、日頃から恋人の気持ちを思いやって大切にする必要があるのです。「不倫」は、既に配偶者に対しては不誠実を働いていることになりますが、関係を結んだ以上、配偶者にも、不倫相手にも、できるだけ誠実に接するべきです。そうすれば、恋人と別れるときも、トラブルのリスクを減らせる可能性が高くなります。不倫を解消したいと考えたとしても、別れを切り出すタイミングを見極める必要があります。特に「不倫関係にあった未婚者が既婚者に捨てられる」という構図は、立場の弱い未婚者にとっては酷な状況です。既婚者側が別れたいのなら、相手の未婚者に「捨てられる」という印象を持たれないようにすることが重要です。

 ▼第5条「避妊は絶対」

 もし女性が妊娠した場合、早めに二人で話し合ってどうすべきか判断すべきです。中絶のタイミリミットだけでなく、宿した命を奪うというデリケートな面もあります。男性はそのことを十分に考慮して女性に接するべきです。「二人で合意して行為に及んで愉しんだ結果の妊娠だし、中絶費用は自分が払ったのだから」という考えでは、女性を傷つけてしまいます。手術後は、女性となるべく一緒の時間を過ごすなど、優しく接するといった精神的なフォローは不可欠です。手術後の男性の接し方が悪ければ、女性が精神的に不安定になってトラブルに発展する可能性もありえます。

 また、出産を選択しても母になる女性が未婚者か既婚者かでさまざまな障壁があり、それを乗り越えるには気力も体力も財力も必要になります。こうしたリスクを避けるためにも避妊は絶対に必要です。

 ▼第6条「断ち切る勇気を持つ」

 やっぱり家庭が大事と思うなら、どこかの時点で不倫を終わらせる勇気も必要です。もし、身を焦がすような恋愛をしていても、どこかで冷静になってその先の人生を考えるべきです。不倫相手と別れるか、配偶者と離婚するか。どちらを選択しても、修羅場があるでしょう。それでも、どっちつかずの関係を維持しようとすればするほど、リスクは高まります。取り返しのつかない事態になる前に、思い切って「断ち切る勇気」が必要なのです。

 ▼第7条「もめない『終わらせ方』を習得する」

 不倫関係を終わらせる時に、いちばん大切なのは「終わらせ方」です。相手を逆上させては絶対にいけませんし、傷つけて別れるのも避けるべきです。「不倫ではあったけれど、いい恋愛だった」とすっきり別れるには、不倫相手に最後まで誠実に接することです。

 特に既婚者と未婚者の不倫の場合は、「未婚者側に別れを切り出させる」ことが重要です。未婚者には「家庭」という戻る場所がありません。未婚者が、既婚者に「振られた」となれば、「強い立場」の相手にいいようにされたと思い込んでしまいます。しかし相手から別れを切り出させることは容易ではありません。自然消滅を狙うのも難しいでしょう。相手の感情が高ぶっている時に、唐突に別れを切り出しては、不倫を暴露されるリスクにだってなりえます。

 無難なのは、時間をかけながらフェイドアウトするという方法です。仕事を理由に会う頻度を減らしていくとか、メールの頻度を徐々に減らしていくといった方法です。いずれ終わりを迎える恋愛なら、急激に別れを告げるよりも、リスクの低い「終わらせ方」をすべきです。大切なのは、「一度は愛し合った思い出を互いに壊さないまま、自然な別れで終わらせる」こと、そして何事もなかったように元の生活に戻ることなのですから。

 長谷川裕雅

 東京永田町法律事務所代表。弁護士・税理士。早稲田大学卒業後、朝日新聞社に入社。事件記者として忙しい日々を送るなかで、弁護士になりたいと一念発起し、司法試験に合格。大手渉外法律事務所や外資法律事務所を経て独立。相続問題や危機管理などを戦略的に解決できる専門家として活躍。著書に『磯野家の相続』(すばる舎)などがある。

 (文=弁護士 長谷川裕雅)