【江藤詩文の世界鉄道旅】鉄道ファン注目! あの列車に乗りに中国へ 中国高速鉄道(1)

 
鉄道車両の撮影は国によっては禁止されている場合もあるが、中国は比較的撮影しやすかった

 春秋航空日本(スプリングジャパン)というLCC(格安航空会社)をご存じだろうか。国内線では東京(成田)、大阪、札幌のほか広島に佐賀とクールなデスティネーションに就航。東京(成田)発着の国際線は、重慶、武漢、天津、ハルピンとこれまた独自路線を開拓している。そしてこのエアラインは、ときどき目を疑うような低価格のセール料金を打ち出すことがあるのだ。いまがチャンス。鉄道ファンに話題のあの豪華な「中国高速鉄道」に乗ってみようと、重慶行きを決めた。

 私が選んだルートは重慶から武漢まで。告白すると私は中国語がまったく話せない。ホテルのコンシェルジュによると、中国の鉄道といえば座席の奪い合いが名物で、たとえ上級クラスのシートでも入手困難になるそうだ。移動日の朝、券売窓口で長い時間行列に費やすのは避けたい。ひるんだ私は乗車前日に街中の出張所で乗車券を手配した。前に並んでいるのはたったひとり。購入時にはパスポートなど身分証明書の提示が必要だ。あらかじめコンシェルジュに書いてもらった「重慶から武漢まで 商務座(ビジネスクラス)1枚」というメモを恐る恐る出すと、窓口の女性はメモに算用金額を数字で書き込んでくれた。ありがたい。現金を支払ってあっという間に終了。手数料もかからない。なんだ、中国語できなくても楽勝じゃん。

 ちなみに重慶から武漢までの乗車時間は約7時間で、飛行機なら羽田空港からシンガポールまで行けてしまう。「外国人のお客様は、みなさま英語が通じる飛行機で移動なさいますから」「重慶から武漢まで飛行機なら1時間半で便数も多く、価格も鉄道より安いですから」。宿泊したホテルのレセプショニストやコンシェルジュが口を酸っぱくして制止するのを振り切って、鉄道移動を選んだ私。英語がぺらぺらの26歳美人コンシェルジュは、諦めた表情で「車内で必要になるだろう考えられる限りの中国語」をメモしてくれた。準備は整った。いざ、重慶北駅へ!

■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら