天体観測を楽しむ「宙ガール」急増中 癒やし求め…おしゃれに
専門性が高く、男性中心の趣味というイメージが強かった天体観測を楽しむ若い女性が急増中だ。小さな双眼鏡を手に、友人たちとおしゃれに星空を鑑賞する「宙(そら)ガール」をターゲットにした観測イベントなども活況という。(櫛田寿宏)
知識がなくても
今月12日の夜、東京都の会社員、望月麻千子さん(37)は友人4人とともに千葉県市原市のキャンプ場を訪れた。バーベキューやチーズフォンデュ、ワインを楽しんだ後、地面にシートを敷いてみんなで寝転び、出現のピークを迎えたペルセウス座流星群を鑑賞。テントに泊まって自然を満喫した。
2、3年前から星を見るようになったという望月さん。「美しい星空を見ていると無心になれる。天文学に関する知識がなくても楽しめますよ」
「平成24年5月の金環日食をきっかけに、天体観測に興味を持つ人が増え、女性にも裾野が広がったようです」。こう語るのは、国立天文台天文情報センターの小野智子さんだ。
この年、光学機器メーカー「ビクセン」は、ピンクやグリーン、パープルなど5色をそろえたコンパクトな双眼鏡「アリーナH」を発売、さらに防寒対策のブランケットや座布団など宙ガールをターゲットにした商品を売り出した。
同社企画部の都築泰久部長によると、「宙ガール向けの観測会なども人気で、需要が高まっている」といい、コンパクトな双眼鏡は今年、約3万個が売れるヒット商品に成長した。
日本一の星空
各地で開催されている観測会も活況だ。
環境省の全国星空継続観察(18年度)で「星が最も輝いて見える場所」に認定された長野県阿智村は24年、春から秋にかけてスキー場「ヘブンスそのはら」のゴンドラを活用した観測イベント「天空の楽園 日本一の星空ナイトツアー」をスタート。以降毎年開催されており、昨年は、期間中の参加者が過去最多となる約6万2千人を記録した。今年もすでに前年同時期を上回る人気ぶりという。
イベントは、同村や観光団体などでつくる「スタービレッジ阿智誘客促進協議会」が主催し、村を挙げて取り組んでいる。同会の松下仁事務局長は「最近は、若い女性同士の参加者の増加が目立つ。ピアノの弾き語りコンサートなどロマンチックな演出が受けているようです」と話す。
星のソムリエ
星座や宇宙に関する知識を学ぶ講座も人気を呼んでいる。
15年に山形大理学部が中心となって創設した「星空案内人資格認定制度」。天文学の知識や星座にまつわる物語、望遠鏡の操作方法などについて講座で学び、認定試験を突破すれば、星空や宇宙の楽しみ方を指南する“星のソムリエ”と呼ばれる「星空案内人」の資格が取れる。
全国各地で開講されており、現在約600人が星のソムリエとして、各地の天文台や科学館などでボランティア活動をしている。
東京・六本木の六本木ヒルズを会場に10月、開講予定の同講座は、募集開始直後に定員30人の枠が埋まった。主催する「六本木天文クラブ」によると、受講者の7割が女性で、30~40代が中心という。
「この世代の特に働く女性は、何かに癒やしを求めている。自然に触れながら自分磨きにもなる天体観測に魅力を感じる人が増えているのでは」
昨年、星のソムリエを取得した東京都のシステムエンジニア、山田布由子さん(40)は、多くの女性が星空に魅せられる理由をそう語っている。
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