『「暗黒・中国」からの脱出』顔伯鈞・著、安田峰俊・訳

書評

 ■隣人”の本性垣間見える一冊

 反体制運動に身を投じたエリートに当局の弾圧が始まる。追っ手から免れるため、香港、チベット、ミャンマー国境と2万キロの距離を逃げ続ける。そして脱出先の東南アジアにも追っ手が…

 これは三文小説ではなく、中国人である著者自身の身に起きた事実。本書はその2年間の道程の実録だ。

 北京に妻子を残し、各地の支援者に支えられながら、バスを乗り継ぎ、雪山を越えて逃げ続ける生活が活写されている。

 習近平政権の人権派への追及はかくも執拗(しつよう)なのかと驚かされる。筆者は現在も国外潜伏中。日本の“隣人”の本性が垣間見える一冊だ。(842円、文春新書)