花粉症が引き金で食物アレルギーに… 豆乳などで重症例

 
花粉・食物アレルギー症候群の組み合わせ

 花粉症が引き金となって、生の果物など、花粉と似た原因物質(アレルゲン)を含む食品にもアレルギー症状が出る「花粉・食物アレルギー症候群」が増えている。通常は口や喉の軽い症状で済むため大問題になってこなかったが、豆乳やモヤシなど一部の食品で重症化する例が近年明らかになり、注目されている。一般的な検査では見つけにくいのも特徴で、詳しい医師は「気になる症状があったら専門医の受診を」と勧めている。

 意外な診断

 60代のA子さんは、中華料理店で焼きそばを食べた後に、口の中にかゆみや「イガイガ」を感じ、顔が腫れ上がるなどのアレルギー症状が出た。

 10年以上前にビワを食べてアレルギーを起こして以来、サクランボ、リンゴ、モモと、食べられない果物が増えていったため「果物アレルギーなんだ」と思って生の果物は避けていたが、全く違う食べ物で症状が出たことに「何か深刻な病気では」と不安になり、横浜市立大病院を訪ねた。

 診察した猪又直子准教授(皮膚科)の見立ては「原因は花粉症です」と意外なものだった。

 A子さんは、カバノキ科の樹木ハンノキに対する花粉症があった。それが原因で、ハンノキ花粉のアレルゲンとよく似たアレルゲンを持つビワやリンゴなどバラ科の幅広い果物に反応していた。

 今回、焼きそばでのアレルギーの原因食材を調べたところ、大豆を発芽させた豆モヤシと判明。大豆にもハンノキ花粉のアレルゲンと似た「Glym(グリエム)4」と呼ばれるアレルゲンが含まれている。

 にわかに関心

 果物のアレルゲンは熱や消化で分解しやすく、通常は生で食べても口の中の症状だけで治まる。だがグリエム4は果物アレルゲンより熱や加工にやや強い。納豆やしょうゆ、みそなど発酵した食品ではこのアレルギーはほぼ起きないが、豆乳や軽く火を通しただけのモヤシなどで症状を起こすことがあり、「アナフィラキシー」と呼ばれる、重い全身症状が出る例もまれにあることが分かってきた。

 一部の専門家を除き知られていなかったが、国民生活センターが平成25年末、ハンノキやシラカンバ(シラカバ)といったカバノキ科の花粉症と豆乳アレルギーの関係について注意喚起してから、にわかに関心が高まってきたという。

 気付かず

 食物アレルギーに詳しい国立病院機構相模原病院の海老沢元宏アレルギー性疾患研究部長は「このタイプのアレルギーは本人が自分のリスクに気付いていないことが多いのが問題」と指摘する。

 まず、ハンノキやシラカンバの花粉が飛ぶのは1~6月で、花粉症の患者数が圧倒的に多いスギ、ヒノキの花粉飛散時期とほぼ重なるため、カバノキ科のアレルギーの有無までは検査していない場合が多いこと。A子さんもそうだった。

 加えて、グリエム4は一般的な検査試薬には微量しか含まれていないため、血液検査で「大豆アレルギー陰性」と出ることも珍しくない。「診断には微量の食品を皮膚に染み込ませる皮膚テストが有効だが、観察に時間がかかるなどの事情から専門医以外には広まっていない」と海老沢さん。

 確立された治療法はないので原因物質を避けるのが対策の基本だが、それには正確な診断が必要だ。グリエム4については2月から保険で血液検査ができるようになったため、これまでよりも容易に体質の診断がつきそうだ。

 猪又さんは「豆乳を飲んで口に違和感があるなど、気になる症状がある人はアレルギー専門医の診察を受けてほしい」と話している。