映画「仮面ライダー1号」 藤岡弘、が43年ぶり主演 「僕自身ビックリ」
■初代世代へ「失望させない」
本郷猛が帰ってきた-。昭和46年放送開始の「仮面ライダー」で主役の本郷猛役を務めた藤岡弘、(70)が同作終了以来、43年ぶりに仮面ライダーで主演を果たす。26日全国公開の映画「仮面ライダー1号」。同一の役者が同じ役での主役を、これだけの期間を空けて演じるのは極めてまれで、藤岡は「私を追い続けてきた人を失望させてはいけない」と、プレッシャーを抱えながら挑んだ。(兼松康)
「いやぁ、僕自身、ビックリしましてね」
今回の単独主演の依頼を受けたのは昨年春。日本の特撮番組や映画では、「ウルトラマン」シリーズなどでもかつての主役が客演する例は多く、藤岡自身も2年前、映画「平成ライダー対昭和ライダー」でも本郷役を演じたが、今回は主演。「単独主演が可能なのか、一瞬、頭が真っ白になった」という。
それでも原作の石ノ森章太郎氏、プロデューサーの平山亨氏、阿部征司氏、東映生田スタジオ所長の内田有作氏らをはじめ、多くの監督やスタッフ、スタントマンに至るまで、「既に鬼籍に入った恩師も多く、そうしたすべての人がパーッと頭に浮かんだ」。映画の中では、小林昭二氏(享年65)が演じた立花藤兵衛の写真を拾い上げるシーンもあり、先人への思いは深い。「仮面ライダーのシリーズが今もなお続いているということは、そんな皆さんの原点が今もいぶいているということ」との思いに突き動かされた。
企画段階から携われることで「45年間の思いや、自分が世界各国で体験してきたことを映像の中に投影できる」と、主役再登板に踏み切った。1年近くかけて、東映側と映画の打ち合わせを続けてきた。その中で軸として打ち出したのは、「命の尊さを今の子供たちに訴えかけられないか」という点だった。
「今は悲しい事件が毎日のように起きている。同時に自殺者が約3万人もいて、未来を背負う若者までが自殺しているのは由々しき問題。命の尊さを子供の頃に考えてもらえれば、少しはお役に立てるのではないかという気持ち」
「未来を背負う子供たちに、大人として何を残し、何を委ね、何を託すのかという大変な使命と責任がある。この思いを俳優として演じるのではなく、自分の内面から出そう」
現在も続く「仮面ライダー」シリーズの主たる視聴者である子供に向けたメッセージは決まった。
一方で、「45年前の私を見たかつての子供たち、私を追い続けてきた人を失望させてはいけない」という思いを持ち、プレッシャーにも襲われた。最初の「仮面ライダー」世代である今の大人たちが、かつて1号や2号について感じた格好良さや憧憬(しょうけい)を失わせてはならないという思いが、「失望させてしまえば、ライダー45年の歴史が終わる。仲間や関係者を裏切ってしまったら」との責任感につながった。
「今の姿を見て『なあんだ』と思われたら何もかもが吹っ飛ぶ。夜も眠れないほど」だった。そうした不安を振り切るため、筋トレなどに励み、戦闘モードへの切り替えを図ったという。
今回のライダーの見た目は、昭和当時のそれとは大きく異なる。25歳だった当時には72キロだった藤岡の体重が、今は84キロに。貫禄を増した体格を反映したムキムキボディの1号となっている。「背負ってきた歴史かな」と藤岡は笑った。
■武道的アクション…次の目標はハリウッド
昭和の「仮面ライダー」に登場した1号、2号は多彩な技を持つ1号と力強さを特徴とした2号が「技の1号、力の2号」と称された。今回の1号は、2号の力までも取り込んだような力強さが特徴だ。戦い方も柔道や空手など、さまざまな武道の有段者である藤岡が武道的な見地から、無駄な動きをせず、エネルギーの配分や俊敏さと体力の温存などを重要視したアクションになっているという。
藤岡の次なる目標はハリウッドだ。「ハリウッドスターは自身の生き方を見せて多くのファンを魅了してきた」と話し、今回の映画「仮面ライダー」はまさにそれに当てはまる作品。全米映画俳優組合(スクリーン・アクターズ・ギルド)のメンバーでもある藤岡の「10年越しの挑戦」の行方が見ものだ。
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