2017.5.24 20:25
日本音楽著作権協会(JASRAC)は24日、ノーベル文学賞受賞者で米歌手、ボブ・ディランさんの歌詞に触れた入学式の式辞をホームページ(HP)に掲載していた京都大に対し、著作権使用料は請求しない考えを示した。同日の定例記者会見で、JASRACの浅石道夫理事長が明らかにした。
JASRACによると、今月に入り、ディランさんの曲「風に吹かれて」の歌詞に触れた同大の山極寿一総長の式辞が、HPに掲載されていると外部から指摘があった。このため、同大に問い合わせるなど事実関係を確認していた。
京大によると、23日にJASRACの担当者から「利用状況を総合的に判断し、使用料は請求しない」との連絡があったという。
会見で浅石理事長は山極総長の式辞について、「(著作物が自由に使える)『引用』と判断した」と述べた。JASRAC広報部は「一般的には、著作権法と過去の判例が引用に当たるかどうかの判断基準になるが、京大の事例が判例と同じように扱われては困る」と説明した。
一方、音楽教室から楽曲の演奏に伴う使用料を徴収する方針を示していることについて浅石理事長は、「来年1月には徴収ができると考えている」との認識を改めて示し、「音楽教室と話し合いをしていきたい」と述べた。
使用料の支払い義務がないことの確認を求める訴訟の提起を検討しているヤマハ音楽振興会など大手音楽教室でつくる「音楽教育を守る会」は、「会員から意見を聞いて今後の対応を検討したい」としており、30日に関係者らによる総会を開く予定。
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JASRACは24日、平成28年度に放送や演奏、CDなどから徴収した著作物使用料の分配額の合計が約1125億円で、20年度(約1155億円)に次いで過去2番目に多かったと発表した。国内作品の1位は歌手の中島みゆきさんが作詞作曲した「糸」だった。
分配額の増加はコンサートやインターネット配信の活況が要因という。