青酸カリ脅迫 入手ルート、流出品悪用の可能性


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 今回の脅迫文に同封された青酸カリの入手ルートも捜査のポイントだ。袋に入っていたのは青酸カリと他の成分を含んだ1グラム前後の粉末とみられる。警視庁捜査1課は、過去に紛失や盗難などで流出した青酸カリが悪用された可能性もあるとみて、入手経路の絞り込みを進めている。

 青酸カリなどの青酸化合物は毒劇物取締法で購入時の審査や、鍵のかかる場所での保管などが義務づけられているが、不十分な管理による紛失、盗難が相次いでいる。平成18年には東京大の研究室で3千人分の致死量に相当する青酸カリ500グラム入りのビンが紛失し、粗大ごみなどと一緒にごみ集積所に搬出された可能性があるとされる。

 青酸カリの致死量は個人差があるものの、経口摂取した場合、成人では0.2~0.3グラム程度。メッキ加工など本来の用途によって青酸カリに含まれる成分は異なるため、警視庁は詳しい成分鑑定を進めている。

 今回、犯人側は脅迫文の差出人欄に、昨年7月に死刑が執行されたオウム真理教元教祖の麻原彰晃(しょうこう)元死刑囚=執行時(63)、本名・松本智津夫(ちづお)=らの氏名を印字したシールを貼るなど注目を集める狙いが透けてみえる。

 犯人側は送付分以外にも青酸カリを保有している恐れがあり、警察当局はさらなる悪用を警戒。昭和59、60年に起きた「グリコ・森永事件」では「かい人21面相」を名乗った犯人が報道機関にも「挑戦状」を送りつけ、スーパー店頭などに青酸入り菓子がばらまかれた。捜査幹部は「犯人が青酸カリを実際に手にしていることが確定しているため、『愉快犯』で片付けることはできない」と警戒する。