■米中摩擦、真に論ずべき点
米政府は中国政府と中国企業へ圧力をかけ続けているが、この間にも中国の技術力、知財力は国際的影響力を高めつつある。そこで技術経営の専門家で、中国のイノベーションや海外連携の活動に関する研究、調査・相談業務で知られる技術経営創研の張輝社長に聞いた。
--今回の米中摩擦問題をどうみているか
「率直に言って、中国の企業、大学、研究機関などでトランプ米大統領の考え方や米政府のやり方に、違和感を持ち、批判する人は少なくない。私自身、残念に思うのは、米大統領は貿易赤字削減のため関税を引き上げたが、赤字は逆に拡大し、米国の企業や消費者の一部にも望ましくない影響を及ぼしていることだ」
--スパイ行為や知財侵害でも摘発に入っているが
「米国発の記事を読んでも証拠についてはあまり書かれていない。この点、米政府は具体的に証拠を示すか説明が必要だ。思えば1980年代、日立製作所や三菱電機の社員が米国で逮捕されたIBM産業スパイ事件があった。必要なら米司法関係機関が本来、対応すべき話。大統領自ら発言する理由とは何なのだろうか」
--犯罪は粛々と摘発すればよく、米大統領の行動は根拠不明に見えると。では、真に論ずべき点はどこか
「3点ある。1つ目は中国の崛起(くっき)(抜きんでること)と中国による海外投資などについて、どう受け止めるべきか。米国の世界戦略にどのような影響を与えるのか。2つ目は国際的なサプライチェーン(国際分業体制と貿易網)の再構築は行われるべきか。再構築コストや時間が必要になる。3つ目は米国の技術的優位性は何をもって維持されるべきかについてである」