【生かせ!知財ビジネス】小中高での教育実現へ 3つの柱掲げ検討着々

 知財戦略本部は、安倍晋三首相の「小学校段階からの知財教育に取り組む」(2016年5月、知財戦略本部会合)という発言を受け、知財創造教育推進コンソーシアム(17年1月設置)で実現への検討を進めている。

 知財人材育成という観点では02年の知財立国宣言以降、さまざまな教材が開発され、実施された。入門版として知財制度を紹介する教材もあったが、学校教育現場での普及には至らなかった。文部科学省は、他省庁や団体が持ち込む新たな素養教育を「◯◯(マルマル)教育」と呼び、「知財教育」もその一種と考えられていた。

 同コンソーシアムは、教育現場での受け入れ実現を念頭に従来の知財教育の発想を転換、新たな教育の追加ではなく、教育指導要領への適応を目指した。同要領にある「豊かな創造性」に着目し、創造性を育む教育に知財を尊重する教育を合わせた「知財創造教育」というスタンスをとった。同要領で育成を目指す「資質・能力の3つの柱」に対応し「知財創造教育の3つの柱」を掲げ、知財創造教育の内容が適合していることを示した。

 今後は、全教科で知財創造教育の内容を体系化する一方、適用可能な既存の教材などを調査し、地域での教育の試験実施のため、組織や仕組みを構築する。

 内閣府の仁科雅弘参事官は、「知財創造教育を行う人材の養成に関する調査研究の実施も決まった。それらの成果を通じ、現場の教職員や教員を目指す学生に、知財創造教育の啓発を進めていきたい」と話している。

 発明推進協会は独自事業として、有識者を集めて「青少年向け知財教育テキスト」の作成を検討している。既に世界14カ国の創造性教育の事例を調査。同コンソーシアムの動きをみながら慎重に開発を進める考えだ。過去には、大学生・一般社会人用の「産業財産権標準テキスト」(特許庁委託事業)を開発した実績もある。

 工業所有権情報・研修館で専門高校・高等専門学校の知財学習を担当する教諭・教授向けの知財学習セミナーの講師を務めるディスプロ(東京都練馬区)の桑原良弘社長は、生徒向けの知財教育について「発明、創造の意識を高め、生産性や品質向上への意欲や改善提案、優れた製品やサービスの生成につながる」と断言した。

 同コンソーシアムの今後の活動が注目される。(知財情報&戦略システム 中岡浩)