岩手・宮城両県にまたがる北上山地に建設が構想されている次世代加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の経済効果について文部科学省は31日、従来の試算と比べ約4割減の2兆6500億~2兆9100億円に下方修正する案を有識者会議で公表した。装置を縮小し建設費を抑える新計画に基づき見直した。
宇宙の成り立ちの解明を目指すILCは、日米欧の物理学者が北上山地への建設構想を進めている。当初は各国が計8300億円の建設費を拠出して平成33年に着工する計画で、文科省は20年間の国内経済効果を4兆4600億円と26年度に試算していた。
だが巨額の費用が課題となり昨年、計画を変更。全長を当初の30キロから20キロに縮小し建設費を約4割削減することに伴い、経済効果を再計算した。文科省は有識者会議などの議論を踏まえ、年内にも建設の是非を決定する。
ILCは地下の直線型加速器で電子と陽電子をほぼ光速で衝突させることで、宇宙誕生時に匹敵する超高温を再現。物質に質量を与えるヒッグス粒子などを作って性質を調べ、物理学の基本法則を超える新理論の構築を目指す。
ただ、規模の縮小で衝突エネルギーが半減するため、当初見込んでいた未知の素粒子発見は困難になるなど、実験内容は大きく制限される。