着物の着付けやレンタル、販売を手掛ける業者「はれのひ」(横浜市、篠崎洋一郎社長)が、保管していた着物の返還がほぼ終わったことを明らかにした。だが、時が過ぎても被害者の傷が癒えるはずもなく、事件の真相もやぶの中だ。(東京商工リサーチ特別レポート)
◆3か月かけてようやく果たされた約束
今年1月8日の「成人の日」に事業を停止し、一生に一度の新成人の夢を奪った、はれのひ。1月26日に横浜地裁から破産開始決定を受けてもうすぐ3カ月になる。
一切連絡を絶っていた篠崎社長は1月26日に初めて会見に出席し、「保管していた着物や仮絵羽を順次お客様の手元に返していく」と話していた。
4月16日、東京商工リサーチ(TSR)は、はれのひの破産管財人である増田尚弁護士(多摩川法律事務所)を取材した。破産管財人は、「お店で保管していた着物はほぼ返還が終わった」と安どの息をもらした。
破産会見で示された資料には、「顧客の皆様の被害をできるだけ少なくする。早期返還を最優先にする」と記載されていたが、3カ月をかけおおむね約束は守られたことになる。
だが、仕立て中だった一部の着物は、購入者が残金を支払わないと手元に戻ってこない。成人式に出席する喜びに満ちて誂えた着物だ。機会を失し、残金を支払い手元に取り戻すのか。新成人の胸中をどんな思いが去来するか、篠崎社長は自分の無責任さに思いを巡らすことはあるのだろうか。