【生かせ!知財ビジネス】日本台湾交流協会・福村拓氏に聞く(上)


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 ■摸倣品、ネットに潜り込む

 アジアで最も親日的な台湾は日本の重要なパートナーの一つ。現地で台湾当局との折衝や日本企業への相談対応、情報支援などで活躍している日本台湾交流協会台北事務所の福村拓主任に、台湾の知財情勢を聞いた。

 --台湾の知財の状況は

 「台湾の特許出願は昨年約4万6000件でIP5(先進5カ国=日米欧中韓=特許庁)に次ぐレベル。台湾智慧財産局は審査能力も高く、外国人出願では日本が最も多い。歴史的経緯から世界知的所有権機関(WIPO)など国際的枠組みに入れないので、各国と相互協定を結んでいる。日本は知財制度構築や審査官教育、特許審査ハイウエー(PPH)などで連携し、友好関係にある」

 --環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は知財分野も含むが、台湾の加入意欲をどうみるか

 「台湾にとって貿易は重要でTPP加入によりさらなる拡大を考えていると思う。多くの分野で高度な技術力を持つが、知財関連法ではTPPの基準に追いついていない部分もあった。加入へ向け法制度を整備している」

 --最近の権利保護の状況はどうか

 「台湾では日本ブランドの評価が高く、日本ブランドの摸倣や商標の冒認出願(権利を持たない者による出願)には依然注意すべきだ。日本の一部地域で有名な商標が登録されてしまった事例では、台湾での無効審判請求が却下された。摸倣品の流通は10年前に比べて大きく改善したが、インターネットや会員制交流サイト(SNS)での販売に潜り込む例が増えている」

 --日本企業としての対策は

 「商標では早期発見、早期対処が重要。除斥期間(5年)経過後は取り消しが難しい。商標権をとる手もあるが、不使用だと取り消される。摸倣品は警察も摘発に力を入れているが、海外サイトまでは手が届かないし、小口個人輸入は税関も取り締まりが難しい。このためネットなどが使われる場合、防止策や対処法について調査し、日本企業向けマニュアルが作れないか考えている」

 --相談先は台北事務所でよいか

 「そうだ。1日には大手日本企業の知財部門出身で中国知財問題にも詳しい後藤光夫氏が知財専門家として着任した。まずは電話やメールをしてみてほしい」(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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【プロフィル】福村拓

 ふくむら・たく 2003年特許庁入庁、05年審査官、ディスプレー関連分野などを担当する。17年6月から日本台湾交流協会台北事務所経済部(知財担当)。42歳。東京都出身。