【生かせ!知財ビジネス】弁理士会「経営センター」スリム化検討

日本弁理士会の本部がある東京倶楽部ビルディング=東京・霞が関
日本弁理士会の本部がある東京倶楽部ビルディング=東京・霞が関【拡大】

 日本弁理士会は、昨春設立した「知的財産経営センター」の体制を1年で見直し、大幅なスリム化を図ることを検討している。そこには「新時代へ向けた弁理士のあり方を今、真剣に考えていかねばいけない」という危機感が隠れている。

 同経営センターは、企業向けの知財経営支援、弁理士への経営支援教育、弁理士が担うべき新しい業務の研究-などをワンストップで実行することを目指すため、それまで散在していた組織を統合し、統合事業本部、知財価値評価事業本部、知財経営コンサル事業本部、知的資産活用事業本部、知財キャラバン事業本部の5本部で、総勢約170人の体制で発足した。

 スリム化案では、知財価値評価事業本部はそのまま残し、統合事業本部と知的資産活用事業本部を統合して「企画統合事業本部」に、知財経営コンサル事業本部と知財キャラバン事業本部を統合して「企業支援事業本部」とし、人員は50人減らして120人にする。

 昨年末、各事業本部間で重複する業務を見直し、5事業本部体制から4事業本部体制に移行する流れが一度固まっていた。ここに来てさらなる見直しへと動いたのは、昨秋に弁理士会長選があり、旧執行部から新執行部への引き継ぎ作業の中で、「旧執行部に対して新年度前のスリム化要求が厳しくなってきた」(関係者)ためといわれる。

 背景には弁理士会内の財政的懸念があり、「2017年度決算は厳しいのでは」という声がある。試験制度改革などで弁理士の数は増加したが、企業の特許出願数停滞やコスト削減要求から経営難に苦しむ中小特許事務所が増え、金額を下げても年会費の未納がなくならない。ある幹部は「弁理士会の業務執行も予算ありきの執行ではなく、本当に厳しく考えないといけなくなった」と険しい表情を見せる。

 また、ほかの関係者は同経営センターが現在、「出席率の悪い担当者を割り出し、継続して所属する意思があるかを内々に確認している」という。弁理士会活動に参加する各弁理士には、組織にいるという寄り合い的な意識ではなく、弁理士の発展を実現するための活動を行う真剣さが求められることになる。今後の改革の動きが注目される。(知財情報&戦略システム 中岡浩)