混迷深めるがんセンター重粒子線治療騒動 女性医師退職が発端 “泥仕合”の背景とは (1/3ページ)

重粒子線治療室の内部=県立がんセンター
重粒子線治療室の内部=県立がんセンター【拡大】

  • 県の調査結果に会見で反論する県立病院機構の土屋了介理事長=2日、県庁

 神奈川県が約120億円を投じたがん専門病院「県立がんセンター」に併設する世界初の重粒子線治療施設をめぐって、医師の退職が相次ぎ治療継続の危機が迫るなど混乱に陥った。医師確保にこぎつけて4月以降も治療継続が決まったものの、病院を運営する県立病院機構の土屋了介理事長を解任する方針を示した県に対して、土屋氏は「(解任は)違法だ」と主張するなど“泥仕合”の様相を呈している。背景を探った。(川上朝栄、写真も)

 県によると、県立がんセンターの放射線治療科に長年勤務していた1人の女性医師が昨夏、退職したことが問題の発端だった。

 医師4人が追随

 重粒子線治療の施設基準を満たすためには、重粒子線治療について一定期間の研修経験を持つ「責任医師」と常勤医師ら2人以上が必要だが、土屋氏によると、女性医師は研修期間が3カ月間ながらも書類には2年間と記載。このことについて土屋氏は「虚偽記載」と認定し、女性医師に対して1年間の派遣研修を命じた。

 一方、女性医師は「県立がんセンターでの勤務実績も認められる」と主張し、虚偽認定を真っ向から否定。派遣後の待遇などにも不満を抱いた末に退職した。女性医師に師事していた複数の医師も「自分たちが同じ目に遭うかもしれない」と動揺が広がり、同科の医師6人のうち4人が今年1月末までに退職する意向を示したという。

「事実をねじ曲げている」と反撃