第155回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は村田沙耶香さん(36)の「コンビニ人間」(文学界6月号)に、直木賞は荻原浩さん(60)の「海の見える理髪店」(集英社)に決まった。
初の候補で芥川賞を射止めた村田さんは千葉県出身。平成15年にデビューし、すでに野間文芸新人賞や三島由紀夫賞を受賞している実力派だ。
受賞作は、長年コンビニのアルバイトを続ける未婚女性が、就職や結婚といった「普通」の価値観を押しつける世間と格闘しながら不器用に生き抜く姿をユーモアを交えて描いた。選考委員の川上弘美さんは「一見異様とも思える主人公を設定しているが、周りの人間を活写することで『普通』に対する批判にもなっている。21世紀の現代でなければ書けない優れた作品」と高く評価した。
荻原さんは埼玉県出身。広告制作会社などを経て平成9年にデビュー。直木賞は5度目の候補。
受賞作は6編からなる短編集。海辺の町にある理髪店を初めて訪ねた僕が、老店主の秘められた過去に触れる表題作をはじめ、近くて遠い家族との時間をつづった。選考委員の宮部みゆきさんは「圧倒的な読み心地の良さがある短編集で、一つ一つの作品が心に残る。ベテランの熟練の技に、大変心を打たれた」とたたえた。
贈呈式は8月下旬、東京都内で開かれる。賞金は各100万円。