【高論卓説】マタギになれない猟師 冬山で1人、自然と対峙する男気 (2/2ページ)

2016.3.17 05:00

 しかし昨今、原生林の減少や禁猟化によりマタギも猟師も害獣駆除の免許を持つハンターの数さえ減少している。マタギと呼ばれる長老たちの高齢化も進んでいる。が、一方、田畑を荒らす害獣は増え続けている。

 スキーで高校時代にインターハイに出場した。東京でサラリーマン生活も経験した。だが山への恋しさは断ち切れず結局、故郷のみなかみ町に戻った。

 マタギへの道を極めるのが達也さんの夢だが、現実問題としてたとえマタギの道を極めたとしてもそれを専業として生きていくことは容易ではない。ジビエ料理が密かなブームとはいえ、そもそも安定した市場も需要もない、自然界が相手なので需要があっても直ちに供給ができるわけでもない。

 雪焼けした顔から白い歯がこぼれる。そんないちずで不器用な生き方をする達也さんの挑戦はこれからも続く。40過ぎて、かみさんがいて、子供がいても、まだ自分の夢を追いかけている。

 日本にはいまだにこんな絶滅危惧種みたいな男がいる。思い詰めると、いちずな職人かたぎの男だけに、余計なお世話と言われるだろうが、こんな日本男児はぜひ応援したい。きっと今日も達也さんは極寒の山中で指先に息を吹きかけながら1人で潜んでいることだろう。

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【プロフィル】平松庚三

 ひらまつ・こうぞう 実業家。アメリカン大学卒。ソニーを経てアメリカンエキスプレス副社長、AOLジャパン社長、弥生社長、ライブドア社長などを歴任。2008年から小僧com社長(現職)。他にも各種企業の社外取締役など。69歳。北海道出身。

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