30回目の打ち上げとなったH2Aは日本の基幹ロケットとして高い信頼性を実現した。平成13年の初号機から失敗は6号機の1回だけで、成功率は世界最高水準の96・6%に達した。欧米の主力機と比べ実績はまだ少ないとはいえ、安定軌道に乗ったといえそうだ。
19年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)から三菱重工業へ打ち上げ業務を移管。増強型のH2Bも含めると、今回は移管から20回目の打ち上げとなった。
H2Aは成功率だけでなく運用の正確さも特徴で、悪天候による延期を除くと全体の8割を予定通りの日時に打ち上げている。こうした高い信頼性を武器に三菱重工は世界市場で巻き返しを目指しており、昨年は初の商業衛星を打ち上げて評価を高めた。
一方、長年の課題は価格競争力の向上だ。商業衛星の受注拡大は産業基盤を維持する上でも重要だが、欧米と比べ数割高いとされる打ち上げ費用が足かせになっている。抜本的な解決は費用が半分の次世代大型機H3が実用化する32年度まで待たなくてはならない。
三菱重工はH2Aの運用を35年度にも終える方針を国に示している。基本技術が共通するH3で世界市場に食い込んでいくには、最後まで安定して成功を重ね、信頼性の評価をさらに固めることが必要だ。(黒田悠希)