ところが今夏、政府が絡む官民ファンド傘下にある知財マネジメント会社が中国の大手電機・電子グループを権利侵害で訴える画期的なことが起きた。他のアジア諸国では“官民同舟”の機関が外国企業を訴えることは珍しくないが、日本では大きな一歩だ。ただ、提訴の決断に際して「真偽は定かではないが、知財マネジメント会社から官民ファンド、経済産業省へおうかがいを立て、最後は外務省の了解まで取り付けたようだ」(都内の弁理士)という話も流れている。少なくとも「侵害されたら撃つために特許はある」(台湾の研究機関知財担当者)というような、普通の行為を実行するまでに、多大な気遣いと労力がかかったことは察して余りある。
特許庁は今後、海外で知財権利侵害をしてしまった中小企業の訴訟費用を保険でカバーする支援策を打つという。保険料の半分は当事者負担だが支援があるのとないのでは大違いだ。来年は厳しい現実に一層目を見開いていかねばならない。(知財情報&戦略システム 中岡浩)