帰巣本能が高いミツバチの群れが突如として消失する奇妙な現象が世界で頻発している。農薬やストレスなどさまざまな原因が指摘されるが、決め手はなく、養蜂業のミステリーともなっている。巣箱がもぬけの殻になってしまうケースも少なくなく、米国では廃業の危機に陥る養蜂業者が続出。ミツバチは植物の受粉で重要な役割を果たすだけに、農業と食の深刻な危機が懸念されている。
米は1年で4割消失
その不思議な現象が初めて報告されたのは、2006年秋の米国でだった。
数人の養蜂業者が巣箱からほとんどミツバチがいなくなっていることに気づいた。奇妙なのは、逃げたハチの死体は巣箱にも周辺にも見つからず、女王バチや生まれて間もないハチは置き去りにされていた。
ミツバチは帰巣本能が高い上に、普通は巣を外敵の攻撃から集団で必死で守ろうとする。ミツバチが巣に近づく人間などを敵とみなして襲い、毒針で刺すのもそのためだ。それなのに大事な巣箱と“家族”を捨て、働きバチたちはどこかへと逃げ去ってしまったのだ。