□作家(ドイツ在住)・川口マーン惠美さん
■無計画なドイツの脱原発政策
--2022年に全原子力発電所の運転を停止し、再生可能エネルギーに置き換える脱原発政策を決めたドイツは、日本では「脱原発の優等生」とみられています
「ドイツの脱原発は、11年3月の福島原子力発電所の事故の後、あっという間に決まりました。ドイツの原発というのは、すでに40年間も議論されてきたテーマで、そこには反原発の土壌も十分にありました。しかも、メルケル政権はその前の年の10月、02年に施行した脱原発法を覆し、従来32年間としていた原発の運転期間を12年間延長することを決めましたが、その後にわかに政府への批判が高まっていた事情もありました。政府が方向転換を模索していた矢先に福島で事故が起き、嵐のように脱原発に突っ走ることになったのです。脱原発を決めた後、ドイツ人の間に『世界中で自分たちだけが正しいことをしているのだ』という恍惚(こうこつ)感が高まり、得意の絶頂でした。しかし、この脱原発の決定には手落ちがあったのです。現在も稼働している9基を含めて全原発を22年までに停止することと、原発分の電力(約20%)を再生可能エネルギーで置き換えることは決めたものの、それをどう実現するかがまったく考えられていなかったのです。無計画な脱原発政策であることは最初から分かっていたのですが、今になってそうした批判や問題点が表に出始めています」