「鬼龍院花子の生涯」や「天璋院篤姫」などの小説で知られる作家で、文化功労者の宮尾登美子(みやお・とみこ)さんが昨年12月30日、老衰のため死去していたことが7日、分かった。88歳だった。
高知市生まれ。昭和20年に満州(現中国東北部)に渡り、21年に帰国。満州の収容所生活の極限状態を書き残そうと、作家を志した。37年に「連」で婦人公論女流新人賞を受賞したが、作家として花が開かず、長い下積み時代を過ごした。
48年に生家の家業である芸者紹介業や両親を題材にした「櫂(かい)」で太宰治賞を受賞、本格的にデビューする。54年に「一絃の琴」で直木賞を受賞した。以来、女性画家の上村松園がモデルの「序の舞」(吉川英治文学賞)、ベストセラーとなった「蔵」など、時代や因習に翻弄されながらも、芯の通ったりりしい女性を描き、多くの読者を魅了した。
また、「寒椿」「鬼龍院花子の生涯」など数多くの作品が舞台化、映像化された。「宮尾本 平家物語」と「天璋院篤姫」はNHK大河ドラマになり、人気を博した。20年に菊池寛賞を受賞。
平成元年に紫綬褒章、21年に文化功労者。